伊藤晴雨「責めの研究」

伊藤晴雨(いとう・せいう 1882-1961) は日本の画家である。責め絵の作成や、妻をモデルとした責めの写真で有名である。彼が書いた「責めの研究」という文章が面白いことを書いていて、それらをメモ。『世界の刑罰・性犯・変態の研究 』が1930年に刊行され、その復刻版が出ている。

基本的には、責めと苦痛において男と女は非常に異なった性向を持っているという男女二元論が非常に強い視点である。ここに、男は公の世界における責めと苦痛であり、女は私の世界での責めと苦痛であるという。公的な世界は、裁判の取り調べなどで、きちんとした秩序のルールに乗って相手に適切な苦痛を与えるという男性的な責めである。私的な世界は遊女屋などで遊女を女が責めるというような女性的な責めである。私的な責めのほうが、時間的には非常に長い。監禁と土蔵と座敷牢の話だから、憶えておく。ただ、正直言って、何がどうなるのかよく分からない。

もう一つが「実験」「観察」という科学的なレトリックを責めにあてはめている。自分自身が妻を縄で縛ったことは「実験」であった。科学の影響がある。しかし、その一方で、それだけに熱中することは「変態性欲」であり、それは頭脳に変化を与え、性格は大きく変わり、商人は破産、職工や芸術家は失業したり技術が劣化したりする。ちなみに、そのような変態性欲の学者は健忘症になるとのこと。

最後に、エピソードとしてメモしておくのが、日本の演劇と責めの場面の変化。日清戦争とともに日本の演劇は責めの場面が増えてくるとのこと。これはおそらく伊藤の個人的な人生の中で、日清戦争を経験したことと、演劇で責めの場面を見たことが重なっていたのかなと思う。もちろん、もしかしたら正しいのかもしれないけれども、私が議論をすることはちょっと無理である。