ジェイン・オースティンと歯医者の問題

昨日のエコノミストエスプレッソ。昨日は家の外で仕事があったので書けなかったが、いつもよりも数倍面白い記事ばかりであった。Meditation 瞑想することがとてもいいのではという記事、映画でアメリカの原住民が疾病で激減してしまうことなど、いくつでもメモとして残したい記事があったが、この記事は何かの折に絶対必要であるから書いておく。

小説家のジェイン・オースティンの手紙は全体で161通しか残っていない。彼女の死後に遺族が全体を焼却したからであるとのこと。その手紙の中の一通が売りに出された。姉のカッサンドラ宛の手紙である。主題は、少なくとも私が把握している主題は、歯医者であるが、もう少しかっこよくいうと、近代化社会の個人と痛みの問題である。1813年に書かれた手紙で、そこで歯医者のことを、A Lover of Teeth & Money and Mischief と書いている。歯を抜いて、お金を儲け、そしてミスチーフを起こしているという意味である。ここの mischief は、おそらく現在ではオブソリートな意味であり、 illness や disease という意味であろう。オースティンはもちろんそのような歯医者にはかからないと書いている。

オースティンの作品その他はもちろん医学史にとっても非常に重要であり、疾病や療養にまつわる作品も書いている。その中で、私がフォローしていないのが、人生の末期にアヘンをとって痛みを避けながら死んでいったという有名な事実である。18世紀の中葉から死ぬ瞬間の痛みをコントロールしながら「安らかに死ぬ」ために当時はアヘンを服用していたという。そのことと歯医者が痛みを引き起こしていることに対する敵意は関係があるのかもしれない。