「白癜」と「なまず」について

歴史学者はその時代に作られた便利なレファレンスを手元に持つ習慣がある。私も18世紀のイギリス医学、19世紀の精神医学、20世紀日本の医薬品カタログなどをかなり使った。本当にお世話になりました。これは専門にはしないけれども、江戸時代につくられた医学事典があるといいなと思っている。薬については事典に近いものがあるが、疾病の事典を知らない。どなたか教えてくださいな。

つまり今日は疾病を少し調べた。「しらはだ」「しらはだけ」「なまず」である。書き方としては「白癜」である。現在の知見が入って成立している記述であり、よくわからないことが多い。


しら‐はだ 【白肌・白膚】

(1)色の白いはだ。純白のはだ。

(2)色素の欠乏で、白色の斑紋(はんもん)を生じる皮膚病。白斑。しろなまず。しらはたけ。

日本書紀〔720〕推古二〇年五月(岩崎本平安中期訓)「其の面身(むくろ)・皆斑白(またら)なり。若しくは白癩(しラハタ)有る者か」

*十巻本和名類聚抄〔934頃〕二「白癜 病源論云白癜〈一云白電 之良波太〉人面及身頸皮肉色変白亦不痛癢者也」

*医心方〔984〕四・一九「病源論云面及頸項身体皮肉色変白与肉色不同点不痛癢謂之白癜〈略〉 和名之良波太」

大唐西域記長寛元年点〔1163〕三「近(この)ごろ婦人(をむな)有り。身悪癩(シラハタ)に嬰(かか)れり」


しらはだけ


「しらはだ(白肌)(2)」に同じ。

今昔物語集〔1120頃か〕二〇・三五「白癩(しらはたけ)と云て病付きて、祖(おや)と契りし乳母(めのと)も、穢なむとて不令寄(よらしめ)ず」

*観智院本類聚名義抄〔1241〕「癩 シラハダケ シラハタ」

*易林本節用集〔1597〕「疥癩 シラハタケ」

 

なまず[なまづ] 【癜】

 

皮膚病の一種。糸状の細菌が寄生して、胸や背中などに茶色や灰白色などのまだらができるもの。しろなまずくろなまずの類。

*宝篋印陀羅尼経仁安点〔1166~68〕「癧(ナマツ)」

俳諧・誹諧独吟集〔1666〕下「顔のなまづや化粧かすめん はれなれば心のどまぬ宮仕〈林門跡〉」

発音

[0][ナ]

辞書

下学・文明・伊京・天正・饅頭・易林・日葡・書言・ヘボン

→正式名称と詳細

表記

【歴】下学・天正・易林

【癧】文明・伊京

【歴瘍】饅頭

【癧瘍】書言

【癜風】ヘボン