コロナウィルスの流行と民主主義と鄧小平との関係について

 
コロナウィルスの流行 (Coronavirus disease 2019, covid 19) が注目を集めている。医学史家としては感染症の流行を深い部分で考えるヒントがたくさん現れている。ことに、今日のエコノミストの記事が非常に面白かった。
 
主題は感染症の流行と。流行地域の民主主義の関係である。データとしては、ルーヴァンのカトリック大学が公開するデータベースを使い、1960年のチベット天然痘の流行から2019年の covid-19 までを見る。横軸が人口一人当たりのGDP でその地域の富裕さをあらわし、縦軸がそれぞれの感染症の流行での死亡率を示している。それに加えて、流行があった地域が民主主義か非民主主義かという規準で、ドットの色を変えて、薄紫か水色かであらわしている。そうすると、ある意味で当然のことであるが、所得が上昇すると感染症の流行による死亡率が低下することが分かる。もう一つが、民主主義か非民主主義かによっても明らかな違いが出ていることがわかる。死亡率を較べると、現在の中国の所得でいうと、民主主義国家では100万の人口につき4人、非民主主義国家では6人となる。
 

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GDP感染症流行での死亡率に民主主義・非民主主義の点の色で表現したグラフです
 
 
非常に複雑な議論と、非常に単純化したモデルの双方が必要な議論である。そこに民主主義の概念を、適度な強調をもって入れることができる。中国の体制に対して批判的なコメントを出すと、鄧小平の有名なセリフがある。英語で書くと “It doesn’t matter whether the cat is black or white, as long as it catches mice.” これは、資本主義が発展して豊かになれば感染症の死亡率は下がるという経済的な視点である。しかし、そこには民主主義も必要であり、政治的な要素も確実に存在している。