赤ワインとフレンチ・パラドックス
Robinson, Jancis and Julia Harding. The Oxford Companion to Wine. 3rd ed. / edited by Jancis Robinson ; assistant editor, Julia Harding edition, Oxford University Press, 2006.
日曜の朝にワイン百科事典を読むとなぜか楽しいということを発見した。ワインは好きだけれども、日曜朝にも欠かせないほど好きというわけではないし、昼ご飯にワインを入れるわけではない。医学史関連の記事を読んでいるからだろうか(笑)
今回は 中世文学におけるワインと、健康とワイン、そして「フレンチ・パラドックス」という懐かしい言葉に出会った。「フレンチ・パラドックス」は1990年前後に流行語となった。フランス人の食生活は、ワインをたくさん飲み、チーズをたくさん食べ、実は冠動脈心疾患になりやすいにもかかわらず、アメリカや(おそらく)イギリスより、その疾患の死亡率などが低いのはなぜだろうという議論である。その中で「適量なら赤ワインは心疾患を予防する」というフランスにとって理想的な結論が出てきたのだろう。「健康とワイン」の項目を読むと、適量の赤ワインはかえって健康にいいというスローガンに満ち溢れていた(笑)
私も赤ワインは割と好きだから、このフランス的な結論には特に反論しない(笑)イギリスに留学したのは1989年で、ワインがイギリスに広まっていたころである。スーパーでも安価で美味しいワインがたくさん並んでおり、それを通じて、赤ワインを飲むようになった。イギリスで7年間過ごしたが、飲んだワインとビールを較べると、ビールは2割以下で、ワインが8割を超えていると思う。ビールよりも減少したのがウィスキーで、壜を一本開けると、下手をするとその壜が1年くらい続いてしまう。
異性の性行為の頻度の予測と現実
Bobby Duffy という社会科学の学者がいて、彼の本 The Perils of Perception はとても面白い。他者の像がどう形成されるのかを統計の手法で明らかにしている。ぜひどうぞ。今回の Prospect の彼の記事は、若い男女に(18-29) 異性はどのくらいの頻度でセックスをしているか尋ねた結果の記事である。月に何度かという問いに、どちらも自分たちは5回だと答えているのに、女性たちは男性は月に15回、男性たちは女性は月に22回と答えている。自分と自分の彼女は5回だけれども、「女たち」は22回ですか。うううむ(笑)
小説『チューリップ熱』
Moggach, Deborah. Tulip Fever. Vintage, 2000.
しばらく前に観た映画の Tulip Fever を読み終わる。映画も小説も17世紀のオランダのアムステルダムに設定されている。映画では、ジュディ・デンチの修道院の話が大きな役割を果たすが、小説にはそんな話はまったく現れず、映画のために作られた話である。でも、小説もとてもいい。
医学史の話をしておきます(笑)ポイントは二つ。女主人公が死んだことにするときに、ペストにかかって死んだからという架空の話は、どのくらい説得力があるのか、私には分からないです。それから、女の主人がバタヴィアに行って黄熱病で死んだといううわさ話という部分は、これはほぼ確実に間違いです(笑)黄熱病はアフリカと新大陸、そしてまれにヨーロッパまで運ばれるもので、東南アジアには現れたことがない疾病だと思います。どうでもいいことですが(笑)
ジャンルの違いと視点の違いーフランス中世文学からのヒント
「傾城反魂香」(歌舞伎)
Social History of Medicine 最新号
Social History of Medicine の最新号。薬の問題や医師―患者関係などの読まなければならない論文がたくさんある。日本の精神医療の歴史に関しては、シカゴのSusan Burns 先生が、近代に関して家族の関係を用いた議論。これは絶対に読まなければならない論文です(笑)