「医学史と社会の対話」の秋学期の企画です。オンライン・セミナー 2020 Part II で、感染症の歴史研究の最前線に立つ3人の研究者を講師に迎え、それぞれの研究のとりくみの中から、最新の知見をお話しいただきます。10月10日が長崎大学の山本太郎先生、11月14日が青山学院大学の飯島渉先生、12月5日が東京都立大学の詫摩佳代先生です。ぜひお出で下さい!
Dunn, Marilyn Ruth. The Emergence of Monasticism: From the Desert Fathers to the Early Middle Ages. Blackwell Pub., 2003.
先日松崎さんがコメントしてくださり、ベネディクトゥスの規則を引用してくださいました。仰る通りです。
あと少し説明すると、2003年に出たマリリン・ダン先生の非常に優れた書物の 126ページです。イタリアのベネディクトゥスの規則を論じた章で、 Diet という見出しが入っている部分です。修道士がどれだけ食べていいかを論じている部分です。料理を2皿か3皿、パンを一日1パウンド、そして飲んでいいワインを一日1ヘルミーナと紹介しています。ここでヘルミーナの部分にこのように書いています。
Each monk is allowed a pound of bread a day and a hermina of wine, probably about three-quarters of a litre of wine, although the use of alcohol is conceded only reluctantly.
ここでダン先生は1ヘルミーナを750ml と解釈している。この部分が分からないのです。ヘルミーナは色々な枠組みがあるようですが、基本的に1パウンドの半分くらいだと思います。だから250ml くらい。ダン先生の解釈の1/3くらいです。調べると、色々な人が色々なことを言っています。
正直に言うと、ヘルミーナという概念がまだ分かっていないのです。もしかしたら初めて見たのかもしれない。瀉血をヘルミーナで数えないので、そこがまだわかっていないのです。
ヨーロッパの病院を支えた強力な柱はキリスト教であり、その中でも修道院という施設が重要である。修道院の一つのメリットは、いつでも機能しているからだろう。疾病でいうとペストのようなもので、数か月の有事があって、その短い期間のために緊急にオープンさせる施設とは異なっている。むしろ、ハンセン病のような慢性型の感染症や、精神疾患のように長期型の疾病にケアを行える空間を作ることができる。新約聖書の福音書に登場するイエスの行動もハンセン病や精神疾患を対象にすることが多いと感じている。
その関係もあって、初期の時期にあたる古代・初期中世の修道院制度をコンパクトに論じた素晴しい本を読んでいるうちに、修道士が飲むワインの量が書いてある場面があった。これは、エジプトに修道院を設立したパコミアス (Pachomius, c.292-348 AD) や、イタリアのモンテ・カッシーノに修道院を設立したベネディクト (Benedict of Nursia, c.480-c.543) などの「生活規則」を見ると、彼らに与えられた食事がわかるとのこと。健康な修道士は肉を原則食べないし、食事は同じものを食べるという規則はあるが、わりと食事はいい。一日二回の食事、それぞれ、二種類の料理、果物など、パン、ワイン。パンは1パウンドというから450グラムくらい。ワインが一日に1ヘミネ (hemine)と書かれている。ヘミネを普通に計算すると約250ml であるが、偉い学者がおそらく約750mlの意味だろうと書いている。しらべてみたらこの解釈が多いが、 500 ml と解釈する人もいる。
一日のワインのこの部分の差は非常に大きい。私にとってはこれは混沌としている世界だが、なぜか教えて欲しい。
言い訳は自分でもよく分からないが、アガサ・クリスティーは良く読む。その中で『魔術の殺人』というミス・マープルものの作品を初めて読んだ。きっと面白いのだろうと思うが、ミス・マープルの若い女性時代の将来はこうしたいという夢をはじめて知った。日本語でいうと「ハンセン病患者の看護婦」、英語でいうと You are going to nurse lepers, Jane, and I was going to be a nun. である。アガサ・クリスティーがミス・マープルがモデルにした憧れのハンセン病の看護婦というのは誰だろう?少し調べて、Kate Marsden かもしれないと思った。女性であり、探検家であり、女性同性愛者であり、とても面白い人物である。 彼女のシベリア紀行記が99円だったので買っておいた。