History of Psychiatry の東アジア特集号です!

台北の陽明大学の Wen-Ji Wang 先生とご一緒に History of Psychiatry の東アジア特集号を刊行しました。中国を対象にしたものが3点、日本が3点、台湾が1点、香港が1点、そして韓国が1点です。これからは、これらの地域の深い研究だけでなく、その地域同士がどのように関係を持ったのか、そして世界の中でどのような意味を持ったのかなどの新しい視点が開かれています。


Akihito Suzuki and Wen-Ji Wang

Introduction: Madness and psychiatry in East Asian countries in the modern period

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221097524

 

Wen-Ji Wang

Managing Chineseness: neurasthenia and psychiatry in Taiwan in the second half of the twentieth century

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221087410

 

Yu-Chuan Wu

Hypnosis, psychoanalysis, and Morita therapy: the evolution of Kokyō Nakamura’s psychotherapeutic theories and practices

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221087411

 

Emily Baum and Zhuyun Lin

Maoism and mental illness: psychiatric institutionalisation during the Chinese Cultural Revolution

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221090631

 

Akihito Suzuki

Psychiatric hospital, domestic strategies and gender issues in Tokyo, c. 1920–45

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221090630

 

Harry Yi-Jui Wu

Relaying station for empires’ outcasts: managing ‘lunatics’ in pre-World War II Hong Kong

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221094689

 

Hsuan-Ying Huang

End of an era or a moment of reshuffling: fragmentation of entry-level training in China’s psycho-boom

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221091466

 

Kyu-hwan Sihn

Distinguishing between neurosis and psychosis: discourses on neurosis in colonial Korea

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221094945

 

Yuki Mitsuhira

Shūzō Kure’s essay on psychotherapy including music in twentieth-century Japan (1916)

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221098517

 

 

A Special Issue on Psychiatry in Modern East Asia in History of Psychiatry, vol.33(2022), issue 3.

Wen-Ji Wang and I have organised an issue in History of Psychiatry in 2022, issue 3. The subject is a rising new topic of East Asia’s history of psychiatry. Three papers on China, three on Japan, one on Taiwan, one on Hong Kong, and one on Korea. The next stage might be the interactions between these countries and areas in the context of global psychiatry and local patients. 

 

Akihito Suzuki and Wen-Ji Wang

Introduction: Madness and psychiatry in East Asian countries in the modern period

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221097524

 

Wen-Ji Wang

Managing Chineseness: neurasthenia and psychiatry in Taiwan in the second half of the twentieth century

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221087410

 

Yu-Chuan Wu

Hypnosis, psychoanalysis, and Morita therapy: the evolution of Kokyō Nakamura’s psychotherapeutic theories and practices

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221087411

 

Emily Baum and Zhuyun Lin

Maoism and mental illness: psychiatric institutionalisation during the Chinese Cultural Revolution

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221090631

 

Akihito Suzuki

Psychiatric hospital, domestic strategies and gender issues in Tokyo, c. 1920–45

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221090630

 

Harry Yi-Jui Wu

Relaying station for empires’ outcasts: managing ‘lunatics’ in pre-World War II Hong Kong

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221094689

 

Hsuan-Ying Huang

End of an era or a moment of reshuffling: fragmentation of entry-level training in China’s psycho-boom

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221091466

 

Kyu-hwan Sihn

Distinguishing between neurosis and psychosis: discourses on neurosis in colonial Korea

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221094945

 

Yuki Mitsuhira

Shūzō Kure’s essay on psychotherapy including music in twentieth-century Japan (1916)

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0957154X221098517

 

 

飯山由貴「あなたの本当の家を探しにいく」展が開催されています!

現代アーティストの飯山由貴さん。家庭や社会における精神医療の問題を鋭い視点でとらえて数々の場で発表してきました。今年の森美術館で行われた飯山さんの展覧は、『美術手帳』にもインタビューされ、国際的にも注目されています。東京都人権啓発センターでも11月30日まで展覧会が行われています。ぜひいらしてください!

 

以下、美術手帳のサイト、東京都人権啓発センターの YouTube と広報、鈴木による飯山さんのインタビュー、飯山さんの作品を展示した愛知県美術館学芸員の中村史子さんのインタビュー、そして飯山さんを発見した画廊 waitingroom の芦川朋子さんのインタビューをまとめました。ぜひご覧ください!

 

bijutsutecho.com

 

www.youtube.com

 

www.tokyo-hrp.jp

 

igakushitosyakai.jp

 

igakushitosyakai.jp

 

igakushitosyakai.jp

プラトンのアトランティスと土木・農業・経済と健康政策

www.bbc.co.uk

 

BBCの in Out Time で プラトンアトランティスについて論じていて、その政治的な内容や技術史的な内容が非常に面白かった。プラトン全集の第十二巻で、ティマイオス種山恭子が、クリティアスは田之頭安彦が翻訳している。もともとソクラテスを含めて4人の人物が対話するという形式で、その最初の人物の名称がティマイオス、次の人物がクリティアスという名称である。アテネギリシアの文脈で、どの政治家に特定されるかということも具体的に分かっているとのこと。

ティマイオスは比較的短い言及で、24e-25d に書かれている。私も含めて、多くの皆さんがここは読んだことがあると思う。面白いのはクリティアスで、113+ と表記されている10ページを超す長大な部分が、アトランティスを論じている。その内容は、神との関係、政治論、土木論、運河論、農業論、通商・運輸論、そしてそれらとつながる人々の健康論などが論じられている。一言でいうと環境と重なる議論である。何かの折に引用できるように、憶えておこう。

一つ小さな面白い点。アトランティスには冷泉と温泉がある。どちらも舌触りと優れた水質が重要で、プールや浴場になっているが、それが王と一般人、そして、婦人用、馬その他の役畜用、おそらく合計4つに分かれているという。この順序であり、また、ここまでが浴場の範囲なのかと納得した。

Plato, Complete works edited by J. M. Cooper and D. S. Hutchinson (1997) 
プラトンティマイオス . クリティアス』 種山恭子・田之頭安彦訳(1975) 

21世紀の治験が生み出すグレーゾーンとBBCのドラマ New Blood (2016)

先日の Tokyo College で英語の講演会が開かれた。二回予定されている Pandemic and Cleanliness に関する講演会の第一回で、藤本大士君や HungYin さんが優れた講演をした。私は “The Global Re-distribution of Health and Cleanliness Risks: the Cases of Clinical Trials” と題して、治験という方法が公正さを目指すと同時に歪んだ状況を作り出す状況の話をした。これはオリジナルな研究ではなくて、大学院向けの講義の準備であり、医学史の専門家向けの話ではないが、とても面白い主題であって、機会を見つけては勉強している。

治験は20世紀の後半に導入されて、医療が前進するための重要な中核になった。ヘルシンキ宣言 (1964) などが軸になっているし、ナチス・ドイツや日本の731部隊のような極端な人体実験や、より日常的な臨床に入り込んでいた無造作な人体実験を改革するための方法である。

20世紀の前半から中葉にかけて発見されたインシュリンペニシリンなどの劇的な効果を持つ新薬の時代が過ぎて、それらよりも有効性が「少し高い」新薬や新しいワクチンが開発されるようになる。その時には、新薬などが、すでに受け入れられたスタンダードな療法よりも優れていることが証明しなければならない。動物実験などをしてあとに、数が比較的多い患者やヴォランティアなどに組織的に実験しなければならない。そのメカニズムのもとで行われた、患者に新しい薬を与え、それがスタンダードよりも優れていることが証明されれば、新薬が有効であると決定される。そのなかで、RCT (Randomized Controlled Treatment) や EBM (Evidence-Based Medicine) などが使われている。

これは素晴らしい概念や理論に関する議論である。ただ、現実は、過去においてはもちろん、現在においてもかなり歪みがある。治験の実践はどうなっているか、具体的に何が起きているか、そのメカニズムの狂いはどうなっているか、治験はどのようにずれているかを調べなければならない。

かつては、囚人や病院患者などが、彼らの合意とはほぼ無関係に実験台となっていた。王子脳病院でも、1930年頃に病院にマラリア療法が導入されるときに、病院内にマラリアに罹患している患者が継続的に存在するために、マラリア療法とは無関係な患者に、人工的にそれを実施していた。

昨日の話では、HIV/AIDS とサハラ以南アフリカを軸にして、Sonia Shah 先生や Adriana Petryna先生の本を読み、若い大竹裕子先生などに文献を紹介してもらい、2015-16年にフランスで起きた CROが起こした治験での事故の話、2020年の corvid-19 のワクチンに関する話も紹介しておいた。医療が進歩するためにはほぼ絶対的に必要な治験が、倫理的なグレーゾーンを作り出してしまう面白い事例だった。

そのような話を実佳としていたら、2016年にBBCが作った New Blood というドラマがあり、その第一回がインドにおける治験の乱用が主題になっているということを教えてもらった。アマゾン・プライムで無料で観ることができる。『ナイロビの蜂』にも言及したが、次にはこれも使わせてもらいます(笑)

 

www.tc.u-tokyo.ac.jp

 

www.tc.u-tokyo.ac.jp

 

Amazon.co.jp: ニュー・ブラッド 新米捜査官の事件ファイル(字幕版) : ベン・タバソーリ, マーク・ストリーパン, マーク・アディ, -, イヴ・ガティエルズ: Prime Video

 

 

21世紀の治験が生み出すグレーゾーンとBBCのドラマ New Blood (2016)

先日の Tokyo College で英語の講演会が開かれた。二回予定されている Pandemic and Cleanliness に関する講演会の第一回で、藤本大士君や HungYin さんが優れた講演をした。私は “The Global Re-distribution of Health and Cleanliness Risks: the Cases of Clinical Trials” と題して、治験という方法が公正さを目指すと同時に歪んだ状況を作り出す状況の話をした。これはオリジナルな研究ではなくて、大学院向けの講義の準備であり、医学史の専門家向けの話ではないが、とても面白い主題であって、機会を見つけては勉強している。

治験は20世紀の後半に導入されて、医療が前進するための重要な中核になった。ヘルシンキ宣言 (1964) などが軸になっているし、ナチス・ドイツや日本の731部隊のような極端な人体実験や、より日常的な臨床に入り込んでいた無造作な人体実験を改革するための方法である。

20世紀の前半から中葉にかけて発見されたインシュリンペニシリンなどの劇的な効果を持つ新薬の時代が過ぎて、それらよりも有効性が「少し高い」新薬や新しいワクチンが開発されるようになる。その時には、新薬などが、すでに受け入れられたスタンダードな療法よりも優れていることが証明しなければならない。動物実験などをしてあとに、数が比較的多い患者やヴォランティアなどに組織的に実験しなければならない。そのメカニズムのもとで行われた、患者に新しい薬を与え、それがスタンダードよりも優れていることが証明されれば、新薬が有効であると決定される。そのなかで、RCT (Randomized Controlled Treatment) や EBM (Evidence-Based Medicine) などが使われている。

これは素晴らしい概念や理論に関する議論である。ただ、現実は、過去においてはもちろん、現在においてもかなり歪みがある。治験の実践はどうなっているか、具体的に何が起きているか、そのメカニズムの狂いはどうなっているか、治験はどのようにずれているかを調べなければならない。

かつては、囚人や病院患者などが、彼らの合意とはほぼ無関係に実験台となっていた。王子脳病院でも、1930年頃に病院にマラリア療法が導入されるときに、病院内にマラリアに罹患している患者が継続的に存在するために、マラリア療法とは無関係な患者に、人工的にそれを実施していた。

昨日の話では、HIV/AIDS とサハラ以南アフリカを軸にして、Sonia Shah 先生や Adriana Petryna先生の本を読み、若い大竹裕子先生などに文献を紹介してもらい、2015-16年にフランスで起きた CROが起こした治験での事故の話、2020年の corvid-19 のワクチンに関する話も紹介しておいた。医療が進歩するためにはほぼ絶対的に必要な治験が、倫理的なグレーゾーンを作り出してしまう面白い事例だった。

そのような話を実佳としていたら、2016年にBBCが作った New Blood というドラマがあり、その第一回がインドにおける治験の乱用が主題になっているということを教えてもらった。アマゾン・プライムで無料で観ることができる。『ナイロビの蜂』にも言及したが、次にはこれも使わせてもらいます(笑)

 

www.tc.u-tokyo.ac.jp

 

www.tc.u-tokyo.ac.jp

 

Amazon.co.jp: ニュー・ブラッド 新米捜査官の事件ファイル(字幕版) : ベン・タバソーリ, マーク・ストリーパン, マーク・アディ, -, イヴ・ガティエルズ: Prime Video

 

 

Tokyo College が「パンデミックの時代の清潔と衛生」というシンポジウムを行います!

2022年11月2日の16時から、英語でシンポジウムが行われます。主題は過去と現在の清潔と衛生の歴史と現在。若い俊英の学者の藤本大士君や Tsai HungYin さんと並んで、私は疾病に対応する手段の新薬品やワクチンが広まっていく過程について話します。ぜひご参加ください!

 

www.tc.u-tokyo.ac.jp