Entries from 2005-05-01 to 1 month

戦争と化学兵器と殺虫剤

第一次・第二次世界大戦がアメリカの化学兵器と殺虫剤の開発に与えた影響を論じた書物を読む。 感染症を制圧するために環境に介入するのは18世紀以来の古典的な方法である。20世紀になると、熱帯医学のマラリア防圧を中心に、都市環境というより自然環境への…

NYの検疫

1892年のニューヨークで起きた、伝染病の検疫をめぐる事件を詳細に研究した書物を読む。 1892年のニューヨーク市は、伝染病が上陸する脅威と緊張を二回経験した。一度目はマッシリア号によって持ち込まれ2月から春にかけて市内の Lower East Side で発生した…

ホロコーストと発疹チフス

19世紀から20世紀にかけて、ドイツが東欧で行った防疫対策と、ナチスのホロコースト政策の重なりを論じた書物を読む。 シャワー室・毒ガス・死体焼却所。こう聞いて、誰もがアウシュヴィッツを思い浮かべるだろう。しかし、これらは、ドイツの医学・公衆衛生…

日本のコレラ研究

ポリッツァーの『コレラ』を読む。 1954年の『ペスト』に次いで、1959年にWHOから出版された金字塔。『ペスト』は約700ページ、『コレラ』は1000ページを超える。自身の観察を織り込みながら、コレラについて執筆当時までの膨大な欧文文献を吟味して書かれた…

リスクの社会的構成と公衆衛生

リスクの社会的構成についてのアメリカとフランスを比較した論文を読む。 病気を避けたいのは、どの時代でも同じである。しかし、「なぜ」ある病気のリスクを避けるのかというロジックは、時代によって、文化によって、状況によって大きく変わってくる。母親…

ロシアの発疹チフス

ロシアの発疹チフスについての論文を読む。 疾病の歴史を本格的に学び始めるまで、ロシアの興隆と拡大が果たした役割を過小評価していた(というか、頭の中にロシアのことなど入っていなかった)。18世紀以来、ロシアは黒海やカスピ海周辺に進出し、それまで…

アメリカの性病

20世紀の前半のアメリカにおける性病対策の歴史の古典的な研究書を読む。 AIDSのパンデミーとともに性病(VD)の歴史の研究は急速に充実したが、その中でもブラントの書物は定まった評価を得ている。ずっと前に買ったまま読んでいなかったが、もっと早く読…

社会疫学

フェローに教えられて、以前に買ってあった社会疫学(Social Epidemiology)の入門書を読む。私の今の研究テーマは、歴史疫学 (historical epidemiology) であると、自分では思っている。それで、これまで「疫学入門」系の本を、英語でも日本語でも何冊か読ん…

死因統計を歴史的に使う

死因について手当たり次第に集めた論文を何点か読む。これから数年間、近代日本の疾病構造の変化を論じる大きな仕事をする予定があるからである。そんな事情もあって、今日は、読んだ論文の要約というより、考えはじめていることを書いてみる。 同じ Medical…

スペインのハンセン氏病

20世紀初頭のスペインに、ハンセン氏病患者のコロニーが設立された時に用いられたメタファーを分析した論文を読む。 1909年に、スペインのアリカンテ県にハンセン氏病患者のコロニーが設立される。スペイン近代化運動の産物であるという。1898年にアメリカと…

公衆衛生 vs 栄養状態

19世紀のイングランドの死亡率の低下に貢献したのは、栄養状態の改善なのか、公衆衛生の発達なのかという古典的な論争を「再訪」した論文を読む。 「マキョウン McKeown のテーゼ」と呼ばれているテーゼがある。医学史の世界で、もっとも論議されたテーゼと…

治療法の違いとジェンダー/セックス

17-18世紀のイギリスの医療において、病気の治療に性差があるかと論じた論文を読む。 「同じ病気であっても男と女の治療は異なっていた」と聞いて、「当たり前じゃないか」と感じるのは確かである。しかし、開き直って、「医者は、どんな原理に従って、男の…