Entries from 2006-07-01 to 1 month

しばらくお休みを頂きます

しばらく夏休みをいただきます。

永劫回帰する流行病

しばらく自殺のリサーチに集中するべきだということは頭では分かっているが、分かれば分かるほどつい現実逃避してしまう。今日までに返さなければならない本だからという理由をつけて、20世紀初頭の疫学の書物を熱中して読む。文献はGill, Clifford Allchin,…

大量殺人のノンフィクション - 昭和13年

自殺と関係が全くないわけではないと言い訳しながら、日本犯罪史上空前の大量殺人事件のノンフィクションを読む。文献は筑波昭『津山三十人殺し』(東京:新潮文庫、2005) 昭和13年、岡山県の僻村で22歳の都井睦雄という若者が一夜に村人30名を猟銃や日本刀…

自殺の文学史

自殺のリサーチが続く。コアになる資料を読みながら、背景の知識を仕入れている。文献はグリゴーリイ・チハルチシヴィリ『自殺の文学史』(東京:作品社、2001)。 自殺の文化史の百科辞典的な書物。時代と地域を問わず縦横無尽に素材を集めて、多様な素材を…

情死の歴史

いつまでも現実逃避をしているわけにもいかず、日本の精神医学における自殺論のリサーチを始めた。読んだ文献は、大原健士郎『心中考 愛と死の病理』(東京:太陽出版、1987) 日本の心中に関する精神医学的・文化史的な考察の大部の書物。歴史的なマテリア…

楽しい流行病

ますます現実逃避的に、江戸明治の流行病にまつわる錦絵を眺める。文献は内藤記念くすり博物館『はやり病の錦絵』(2001)。 はやり病が流行すると予防法や治療法などが出版された。そのときの養生の内容を洒落た形で表現した多色刷りの版画(錦絵)が添えら…

コレラと水際の集落

本当はそんなことをしている暇はないのだが、半ば現実逃避的にコレラのインスピレーションを求めて水辺の暮らしの文献を読み漁る。文献は谷沢明『瀬戸内の町並み』(東京:未来社、1991) ペストが一段落して次はコレラである。(本当は次の次の次くらいだけ…

黒死病のインパクト

黒死病研究の「新しい」古典を読む。文献はHerlihy, David, The Black Death and the Transformation of the West (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1997) ペストは普段は野生のげっ歯類の間で常在している病気であるが、ネズミという人間に最…

17世紀の悪魔憑き

17世紀の悪魔憑き患者、クリストフ・ハイツマンの文書を集めた資料を読む。文献はIda Macalpine and Richard Hunter, Schizophrenia 1677 (William Dawson: London, 1956). クリストフ・ハイツマンはバヴァリア出身の画家。1677年に教会で痙攣の発作を起こし…

体格と気質と合成写真

クレッチマーの体格と気質論に目を通す。文献はエルンスト・クレッチマー『体格と性格―体質の問題および気質の学説によせる研究』相場均訳(東京:文光堂、1969) クレッチマーの肥満型・細長型・闘士型の体格の三分類は、体格と気質の関係についての有名な…

危険因子と公衆衛生

数日、更新が滞りました。 今日から再開です。 アメリカの公衆衛生における危険因子の概念の発達をたどった研究書に目を通す。文献はRothstein, William C., Public Health and the Rise Factor: A History of an Uneven Medical Revolution (Rochester: The…

梅毒と芸術的創造性?

19世紀の芸術家たちの梅毒病歴を詳細に調べた書物を読む。文献はHaydon, Deborah, Pox: Genius, Mandess and the Mysteries of Syphilis (New York: Basic Books, 2003). 歴史上の人物がどんな病気にかかっていたかを調べるのは、医学史の知的フロンティアで…

医学史の教科書

今日は医学史の教科書の紹介を。 医学史をどうやって教えるかというのは、同業者にとって悩みの種だと思う。一昨年、現段階では最高の教育リソースが出版された。意外に知られていないようなので紹介する。文献は、Elmer, Peter, The Healing Arts: Health, …

フランス革命と内面性の発見

フランス革命後の中道保守の哲学者が作り上げてフランスの高等学校のカリキュラムに張り巡らした「内面性の哲学」の研究書を読む。文献はGoldstein, Jan, Post-Revolutionary Self: Politics and Psyche in France 1750-1850 (Cambridge, Mass.: Harvard Uni…

猫の品種改良・伝染病研究所版

このところネズミの話ばかり書いているので、ちょっと気分転換に猫の話でも。文献は色々あるが、北里柴三郎『<ペスト>ト蚤ノ関係ニ就テ』(東京:東京市役所、1909)が面白い。 1894年に当時ペストが流行していた香港でイェルサンがペスト菌を発見したあと…

精神病と芸術的創造性

大きな精神病のエピソードを経験した文人の回想記を読む。文献はSymons, Arthur, Confessions: A Study in Pathology (New York: Haskell House Publishers Ltd., 1972). このテキストの存在は、Yahoo! ブログのhitomidoniine さんのエントリーで教えてもら…

タイのコレラ

タイのコレラについての論文を読む。文献はTerwiel, B.J., “Asiatic Cholera in Siam: Its First Occurrence and the 1820 Epidemic”, in Norman G. Owen ed., Death and Disease in Southeast Asia: Explorations in Social, Medical and Demographic Histo…

ジャワ島のペスト

日本のペストの議論が固まってきた。インスピレーションを求めて色々な地域のペストの文献を読んでいて、20世紀のジャワ島のペストの論文を読む。文献はHull, Terence, “Plague in Java”, in Norman G. Owen ed., Death and Disease in Southeast Asia: Expl…

環境思想の帝国史

環境思想と対策のグローバル・ヒストリーの概説書を読む。文献はGrove, Richard H., Ecology, Climate and Empire: Colonialism and Global Environmental History, 1400-1940 (Cambridge: The White Horse Press, 1997). だいぶ前にこのブログでドナルド・…

コレラをふりまく怪物は食べたら美味しい

幕末のコレラ流行の折に民衆の間に噴出した想像力とエネルギーを研究した書物を読む。 高橋敏『幕末狂乱(オルギー)-コレラがやって来た!』(東京:朝日新聞社、2005) 日本で最初のコレラ流行は1822年のものである。二回目が1858年の安政のコレラで、こ…

ラッパ狂はモノマニーか?

京都市社会課『京都市における精神病者及その収容施設に関する調査』(昭和10年)には精神病の疫学統計が掲載されている。どんな診断の精神病が多いのかを知ろうとして作ったのだろう。 これが、疫学としては全く役に立たない。悲しさを通り越して嬉しくなる…

音楽と精神病の治療

nietzsche_rimbaudさんのレンブラントにインスパイアされて、今日は画像の紹介題です。 http://blogs.yahoo.co.jp/nietzsche_rimbaud/37025600.html ずっと古くから音楽が精神病の治療に用いられたことは疑いない。サンダー・ギルマン (Sander Gilman )と…

河川文化批評

「河川文化批評」とでも呼べる個性的な本を読む。文献は富山和子『水の文化史』(東京:文芸春秋社、1980) 富山和子さんの短い文章は何度か雑誌などで読んだことがあるが、まとまったものは初めてである。淀川、利根川、木曽川と筑後川とその流域について、…