Entries from 2009-01-01 to 1 year
必要があって、ウィリアム・ジェイムズの心理学書を読む。文献は、James, William, The Principles of Psychology, 2 vols. (New York: Dover Publications, 1950). これは1890年に二巻本で出版されたものと同じ形で再版されたものとのこと。合計1300ページ…
必要があって、幕末・維新期の尾張藩の医学についての短い論文を読む。文献は、岸野俊彦「幕末維新期の尾張の学問と医学」『名古屋医史談話会 会報』26(H11), 1-7. 幕末の尾張藩の内部では、幕府にならって開国するか、それとも幕府に反対して攘夷を唱えるか…
必要があって、江戸後期の彦根藩の藩医の活動についての論文を読む。文献は、海原亮「彦根藩医学寮の設立と藩医中―藩医河村氏の記録から―」『論集きんせい』no.23(2001), 43-63. ローカルな事例の資料紹介の形式をとっているが、この著者ならではの優れた洞…
必要があって、19世紀の気候順化運動についての論文を読む。文献は、Dunlap, Thomas R., “Remaking the Land: the Acclimatization Movement and Anglo Ideas of Nature”, Journal of World History, 8(1997), 303-319. オーストラリア、ニュージーランド、…
間違えて『雨の名前』という本を買ってしまった。文献は、高橋順子『雨の名前』(小学館、2002) 角川書店から『ネイチャー・プロ』というシリーズが出ている。写真集と図鑑と歳時記を組み合わせたような人気が高い美しい小型の本で、私は『色の名前』『空の…
必要があって、石黒忠悳の伝記、『懐旧九十年』の抜粋版を読む。オリジナルは、私はちゃんと読んだことがないけれども、昭和11年に出た大部な本らしく、それを七分の一くらいに縮めたものが岩波文庫で出ている。大きなオリジナルのほうも、今年の冬には、ち…
必要があって、カール・ポパーが精神分析は疑似科学であると断じている有名な箇所を読む。文献は、ポパー『推測と反駁』藤本隆志他訳(東京:法政大学出版局、1980)の第一章にあたる。ポパーの理論は、私が大学に入って一番最初に授業で聞いて学んだ高等な…
仕事の合間に三島由紀夫『潮騒』を読む。ずっと以前に読んだけれども、あらかた忘れてしまっていた。古典古代の小説の『ダフニスとクロエー』という羊飼いの少年少女の恋愛を下敷きにして、舞台を伊勢湾の「歌島」に移し替えて、猟師と海女の新治と初江の恋…
必要があって、世紀転換期から第一次大戦までの社会医学の展開を学生向けに解説した章を読む。文献は、Weindling, Paul, “From Germ Theory to Social Medicine: Public Health 1880-1930”, in Deborah Brunton ed., Medicine Transformed: Health, Disease …
必要があって、医学史の教科書の中で、イギリスの精神病院の発展を説明した章を読む。文献は、Andrews, Jonathan, “The Rise of the Asylum in Britain”, in Deborah Brunton ed., Medicine Transformed: Health, Disease and Society in Europe 1800-1930 (…
必要があって、医学史の教科書の中の、1880年から1930年のヘルスケアへのアクセスを開設した章を読む。文献は、Deborah Brunton, “Access to health care, 1880-1930”, in Deborah Brunton ed., Medicine Transformed: Health, Disease and Society in Europ…
必要があって、江戸時代(文化13年)に書かれた、世の退廃を嘆く書物の中の、医業に関する部分を読む。文献は、武陽隠士『世事見聞録』(東京:岩波書店、1994)近年の医者たちは、医道の本意を失い、欲情に動かされて驕奢になっている。医は仁術であるのに…
必要があって、江戸時代の養生論を読む。文献は、香月牛山「老人養草」、桑田立斎「愛育茶譚」など。どちらも日本衛生文庫に収録されている。 香月から、想像上の歴史学と形態学と養生論を組み合わせた曲芸的な議論をひとつ、桑田からは、なぜ都市が不健康な…
シュヴァイツァーの『水と原生林のはざまで』を読む。岩波文庫の古い訳がある。この作品は、子供むけのリライト版を子供のときには読んだきりで、ちゃんとした翻訳を読むのは実は初めてである。シュヴァイツァーは、哲学と芸術を学んだあとで医学を学びなお…
必要があって、江戸時代の養生論を読む。文献は、杉田玄白『養生七不可』。大正期に三宅秀・大澤謙二が編集した『日本衛生文庫』全六巻の第一巻に収録されている。江戸期の医者は儒学者の身振りをすることが多かった。そのため、殿様への忠言という枠組みに…
おなじく、昨日の書物から、植民地下の朝鮮の迷信について。 礫川全次編『病いと癒しの民俗学 歴史民俗学資料叢書 第三期 第二巻』(東京:批評社、2006)『朝鮮の迷信と俗伝』(1913) 朝鮮の京城で出版された。らい病はその先祖を良い墓に葬らなかったから…
必要があって、異色の医学ジャーナリスト、田中香涯が優生学に反対した論考を読む。文献は、田中香涯「社会的に必要なる病者」礫川全次編『病いと癒しの民俗学 歴史民俗学資料叢書 第三期 第二巻』(東京:批評社、2006) 103-107 田中の論理は以下のような…
必要があってクロード・ベルナール『実験医学序説』を読む。文献は、ベルナール『実験医学序説』三浦岱栄(東京:岩波書店, 1970)1865年に出版された、実験生物学の古典中の古典。実証主義に基づいて「科学は進歩する」という信念を高らかに謳いあげ、医学…
もう一日無駄話です。 同じく飛行機の中で観た映画。『アメリ』のオドレイ・トトゥが、若き日のココ・シャネルを演じている。機内ショッピングのカタログで知ったのだけれども、オドレイ・トトゥは、キットマンの後を継いで、シャネルの5番の香水の新しいモ…
出張の飛行機の中で、映画『クヒオ大佐』を観る。自分はアメリカ空軍のパイロットであると名乗って、日本人の女性を次々と結婚詐欺にはめた実在の人物がモデルらしい。堺雅人が大佐役。だまされる女性が三人いて、そのうちの主たる役は松雪泰子さんという女…
今日は無駄話。イギリスの月刊誌の『プロスペクト』を10年以上購読している。日本でいうと「総合月刊誌」というくくりが一番近いだろうけど、たとえば『文芸春秋』に較べたら、値段はほぼ同じだけれども、1/5くらいの厚さしかない。割高感はあるけれども、記…
必要があって、今昔物語の現代語訳を読む。福永武彦の現代語訳がちくま書房から文庫で出ているという、文明国の贅沢。『今昔物語』は、天竺(インド)、震旦(シナ)、本朝(日本)の三部に大きく分かれて、合計で約1,000点の短い説話が集められている。その…
必要があって、蝦夷地の天然痘と種痘を論じた論文を読む。文献は、香西豊子「アイヌはなぜ『山に逃げた』か?-幕末蝦夷地における『我が国最初の強制種痘』の奥行き-」『思想』No.1017(2008), 78-101.一日前に記事にしたものと同じ著者の天然痘論で、舞台…
必要があって、『江戸砂子』といわれる江戸のガイドブックを読む。文献は、小池章太郎編『江戸砂子』(東京:東京堂出版、1976) 『江戸砂子』の名前を冠する江戸の地誌は何種かあって、18世紀後半から刊行されて、続編や拾遺なども出ている。この書物は、三…
必要があって、沖縄の疾病の歴史を読む。文献は、稲福盛輝『沖縄疾病史』(東京:第一書房、1995)沖縄の疾病というのはとても面白い。民俗学の視点からもきっと面白いのだろうけれども、疫学の視点からも、重要な洞察を提供してくれる。私は自分でリサーチ…
著者に頂いた、江戸時代の八丈島の痘瘡(天然痘)の流行についての論文を読む。文献は、香西豊子「医説の中の八丈島」『思想』no.1025(2009年9月号), 46-71. 著者は、私が深く尊敬する医学史研究の若手の実力者で、同じ『思想』に発表された「アイヌはなぜ『…
必要があって、六本木の森美術館で開催されている「医学と芸術」展に行く。 2月28日まで開催されています。 詳細な案内は、こちらをご覧ください。http://www.mori.art.museum/contents/medicine/ ウェルカム財団の医学史コレクション、森美術館が集めたりコ…
必要があって、アメリカの哲学者で美術評論家のアーサー・ダントのエッセイ集を読む。文献は、Danto, Arthur, Unnatural Wonders: Essays from the Gap between Art and Life (New York: Columbia University Press, 2005). 著者は、アメリカの The Nation …
モルガーニの書簡診療の続き。モルガーニが「この手紙に書かれている病気は、ヒポクラテスのどこそこに記されている病気である」といってパドヴァ大学の教授の実力を見せつけたが、ヒポクラテスの該当箇所を念のために読んでみる。「『病気について』の第二…
三島の戯曲を読んだあと、数点、能の原作を読んでみる。老女の物狂いが出てくる「卒都婆小町」について書くのは、憶えておくと研究のヒントになるかもしれないという浅ましい考えもあるが、最近、老いを取り上げた話が心に響くということもある。岩波の古典…