Entries from 2010-02-01 to 1 month

オナニズム言説の通俗化

必要があって、18世紀のマスターベーション理論についての論文を読みなおす。文献は、Jordanova, Ludmilla, “The Popularization of Medicine: Tissot on Onanism”, Textual Practice, 1(1987), 68-79. 短いけれども鋭い洞察が盛られていて、インスピレーシ…

18世紀フランスの精神病棟

必要があって、18世紀のモンペリエの精神病棟についての研究論文を読みなおす。文献は、Jones, Colin, `The Treatment of the Insane in Eighteenth- and Early Nineteenth-Century Montpellier.' Med.Hist., 1980, 24: 371-90.モンペリエの最初の精神病棟は…

ベルナールと実験生理学

必要があって、ベルナールの実験生理学を題材にして、科学社会学と科学史を包含する試みを示した古典的な論文を読む。文献は、Coleman, William, “The Cognitive Basis of the Discipline: Claude Bernard on Physiology”, Isis, 76(1985), 49-70. この論文…

種痘の歴史

必要があって、幕末から明治にかけての種痘の歴史を読む。文献は、細野健太郎「幕末明治初期の埼玉県域における種痘」『国立歴史民俗博物館研究報告』No.116(2004), 301-315. 小川亜弥子「長州藩における牛痘種痘法の導入と普及」『国立歴史民俗博物館研究報…

紫禁城の黄昏

必要はなかったけれども、『紫禁城の黄昏』を読む。『ラスト・エンペラー』の映画を観た時に買った岩波文庫。中国最後の皇帝であった宣統帝溥儀の「帝師」であったイギリス人、レジナルド・ジョンストンの回想記である。 エピソードを一つ。朱なにがしという…

国際博覧会と医学

必要があって、アメリカの国際博覧会における衛生関係の展示の研究書を読む。文献は、Brown, Julie K., Health and Medicine on Display: International Expositions in the United States, 1876-1904 (Cambridge, Mass.: MIT Press, 2009)日本の「衛生博覧…

「精神」病の通俗化

必要があって、明治期の精神医学の通俗化についての研究書を読む。文献は、川村邦光『幻視する近代空間―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』(東京:青弓社、2006)「民衆の深層の知」が出現した事件の分析と、必ずしも深層ではないが(いや、深層だろ…

近世の女性と医療

必要があって、近世の女性と医療についての雑誌の特集号を読む。文献は、Fissell, Mary E., “Introduction: Women, Health, and Healing in Early Modern Europe”, Bulletin of the History of Medicine, 82(2008), 1-17. 筆者は、私が最も尊敬する医学史の…

水治療法(ハイドロパシー)の歴史

必要があって19世紀後半のアメリカの水治療法の歴史を研究した書物を読む。文献は、Cayleff, Susan E., Wash and Be Healed: the Water-Cure Movement and Women’s Health (Philadelphia: Temple University Press, 1987)水治療法(ハイドロパシー)というの…

鎖国は日本を健康にしたか

Jannetta, Ann Bowman, Epidemics and Mortality in Early Modern Japan (Princeton: Princeton University Press, 1987)日本の徳川時代の前半は目覚ましい人口増加があり、後半は人口の停滞があった。16世紀から1700年くらいまでに人口は3倍近くなって約300…

『明治大正史 世相編』

必要があって、柳田国男の『明治大正史 世相編』を読む。講談社学術文庫に入っている「新装版」を読んだ。朝日新聞の論説委員であった柳田が、新聞の切り抜きの資料を中道等なる人物に渡して、共同執筆の予定で書き進めたが、結局柳田が全体を書きなおすこと…

人間表情の研究

必要があって、1862年に出版された人間の表情の神経学的・筋肉学的研究書を読む。文献は、Duchenne du Boulogne, G.B., The Mechanism of Human Facial Expression, edited and translated by R. Andrew Cuthbertson (Cambridge: Cambridge University Press…

三宅鉱一『責任能力』

必要があって、三宅鉱一の『責任能力』を読む。文献は、三宅鉱一『責任能力―精神病学より見たる―』(東京:岩波書店、1930 )精神病と刑事責任能力の問題について論じた書物。全体の半分くらいが「無意識」の問題を扱っている、まさにモダニズムの時代の司法…

「身体医文化論研究会 - 病と物語」

2009年度 身体医文化論研究会ワークショップ 「病と物語」2010年3月26日・27日 慶應義塾大学・日吉キャンパスにて、身体医文化論研究会(BMC)のワークショップを開催いたします。今回のテーマは「病と物語」です。身体と病に時間が刻み込まれ、それが物語に…

『日本精神医学年表』

必要があって、金子準二の精神医学年表を読む。とても便利なもので、精神医学史の仕事をするときには、これを見てちょっと頭をブラッシュアップすることにしている。文献は、金子準二・田辺子男・小峯和茂編『日本精神医学年表』(東京:牧野出版、1982)精…

『傷寒論』

必要はないけれども、傷寒論の超初心者向け解説を読む。文献は、森由雄『入門 傷寒論』(東京:南山堂、2007 )恥ずかしいけれども事実だから仕方がないから白状すると、『傷寒論』と名がつくものを読んだのは、これが初めてである。この書物よりも精確で学…

チベット医学

必要はないけれども、チベット医学の祖の伝記を読む。文献は『ユトク伝』中川和也訳(東京:岩波文庫、2001) この書物をチベット語からの翻訳で、しかも学術的な註がついた文庫本(値段は1000円)で読むことができる文明国に住む幸せをかみしめる。今は品切…

あんま・マッサージの歴史

送っていただいた論文を読む。文献は、長谷川尚哉「統合医療で取りざたされる徒手療法のあはき法との整合性〜癒し、リラックスの名の下に無免許施術が広がるわけ〜」これは、『日東医学会誌』の2009年9月号に掲載されているという。詳細は、以下のHPを参照さ…

『「月給百円」サラリーマン』

必要があって、昭和戦前期の物価を中心にした軽い読み物を読む。文献は、岩瀬彰『「月給百円」サラリーマン―戦前日本の<平和>な生活』(東京:講談社現代新書、2006)昭和戦前期、特に昭和10年くらいの物価を中心に解説し、当時は、何がいくらぐらいで買え…

『昭和十二年の「週刊文春」』

アマゾンの「この本を買われた方は、次の本を買っています」で並んでいた本をつい買ってしまい、買ってしまったからには、目を通す。年間に何冊かこういうことがある。文献は、菊池信平・編『昭和十二年の「週刊文春」』(東京:文春新書、2007)戦前に文芸…

田中香涯の医界批判2

必要があって、田中香涯の医療批判をもう一つ読む。昨日の記事が、明治30年代の医界の批判であったのに対し、これは、昭和初期の医界の批判。文献は田中香涯「欠陥だらけの医術」(1)~(4)『医文学』7(1931), no.10, 1-9, no.11, 5-12, no.12, 5-12, …

田中香涯の医界批判

必要があって、田中香涯が明治30年に当時の医界を批判した書物を読む。文献は、『医事断片』(1900)。国会図書館の近代デジタルライブラリーは初版、二版、三版と、三つのエディションをとっていて、だんだんと厚くなって、新しいマテリアルが付け足されて…

『百鬼夜行絵巻の謎』

必要があって、『百鬼夜行絵巻』の謎ときを読む。文献は、小松和彦『百鬼夜行絵巻の謎』(東京:集英社、2008)「百鬼夜行」というジャンルの成立を書き変えて、妖怪の誕生について新しい解釈を示唆した野心的な書物である。古書店のカタログから現れて日文…

「妖怪と異人」

必要があって、小松和彦の妖怪論を読む。ちくま学芸文庫『異人論』に所収されている「妖怪と異人」日本の「妖怪」というのは神の概念と深い関係がある。超自然的、超越論的な存在を、「祀るか、祀らないか」によって、神と妖怪が分かれる。妖怪をいったん祀…

西洋の養生の歴史

必要があって、個人衛生(養生)の歴史のレファレンスをチェックする。文献は、Wear, Andrew, “History of Personal Hygiene”, in Companion Encyclopedia of the History of Medicine, eds. by W.F. Bynum and Roy Porter (London: Routledge, 1992), 1283-…

『病気でない病気』

必要があって、いまから40年以上前の朝日新聞の「健康」欄で人気があった連載を読む。単行本化されて、『病気でない病気』として出版された。もちろん、今では古書でしか買えないけれども、わりと長い間人気を保っていたらしく、初版は昭和43年、私が買った…

『医界の鉄椎』

必要があって、和田啓十郎『医界の鉄椎』を読む。明治43年に出版された書物で、日本における漢方医学復興の一歩となったことで有名な書物。全体に、漢方と西洋医学の長短を冷静に見極め、西洋医学一辺倒の時流を批判し、西洋医学の短所を批判し、漢方医学の…

東洋医学

必要があって、東洋医学の入門書を読む。文献は、大塚恭男『東洋医学』(東京:岩波書店、1996)。さすが第一人者の記述だけあって、とても分かりやすかった。西洋医学とのアナロジーと翻訳不能性の双方を交えて説明してくれるのがよかった。現代医学の発展…