Entries from 2011-01-01 to 1 month
必要があって、「熱帯医学以前の熱帯医学」の論文を読む。文献は、Naraindas, Harish, “Poisons, Putresence and the Weather: a Genealogy of the Advent of Tropical Medicine”, Contributions to Indian Sociology, 30(1996), no.1, 1-36.「熱帯医学」Tro…
必要があって、古典古代の夢と医学についての論文を読む。文献は、Pearcy, Lee T., “Theme, Dream, and Narrative: Reading the Sacred Tales of Aelius Aristides”, Transactions of the American Philological Association, 118(1988), 377-391.宗教的な治…
必要があって、黒死病の原因はペストではないと論じた論文を読む。文献は、Cohn, Samuel K., “The Black Death: End of a Paradigm”, American Historical Review, 107(2002), 703-738. 14世紀の黒死病は、20世紀のペストの症状や疫学的特徴を共有しない例が…
未読山の中から、イギリスの歴史学者のキャナダインがストーンとプラムを論じたヒストリオグラフィの論文を読む。文献は、Cannadine, David, “Historians in “the Liberal Hour”: Lawrence Stone and J.H. Plumb Re-visited”, Historical Research, 75(2002)…
未読山の中から、シェイピンがデカルトと医学の関係を論じた論文を読む。文献は、Shapin, Steven, “Descartes the Doctor: Retionalism and Its Therapies”, British Journal for the History of Science, 33(2000), 131-154.シェイピンはしばらく前からハー…
大岡信が『御伽草子』を子供向けに現代語訳していることを知って、なんとなく興味を持って読んでみた。岩波少年文庫で、一寸法師、浦島太郎、鉢かづき、唐糸そうし、梵天国、酒吞童子、福富長者物語の七編が収録されている。自分の無学を思い知った。知って…
同じくヤプー論のための準備。福永武彦の『日本書紀』の現代語訳の文体が、『古事記』のそれに似ていて、ちょっとがっかりした。これは私の勘違いかもしれないが、別の文体で訳し分けるのかと思っていた。思えば、福永の古典の翻訳である『古事記』『日本書…
必要があって『古事記』を読んだ。福永武彦が現代語に訳したものが、河出文庫から出ている。『家畜人ヤプー』を通じて、人種と身体と国家を論じる論文を準備している。『ヤプー』は日本のSMの奇書として有名だけれども、大きく分けると、人間身体(日本人の…
今日は無駄話。少し先の話になるけれども、次は患者の受療行動の歴史を研究しようと思っている。そのための準備で、新聞の薬の広告をPOしてもらった分厚いファイルを繰りながら、このマテリアルがどのような使い方ができるか考えていた。薬の広告の分析は、…
必要があって、宮本常一『塩の道』を読み直す。文献は、宮本常一『塩の道』(東京:講談社学術文庫、1985)本当に必要なのは塩の不足と病気について触れた箇所だったけれども、そこは宮本自身はたいしたことを言っていなくて、イザベラ・バードに言及して、…
必要があって、古代の疾病についての論文を読む。文献は、有富純也「疫病と古代国家―国分寺の展開過程を中心に―」『歴史評論』No.728(2010), 33-45.天平7-9(735-7)年の天然痘の大流行においては、朝廷が本格的な対策を立てて国司に指示をした。この対策…
必要があって、コッホとパストゥールの「古典的細菌学」についての理解を大きく書きかえる論文を読む。文献は、Mendelsohn, J. Andrew, “’Like All That Lives’: Biology, Medicine and Bacteria in the Age of Pasteur and Koch”, History and Philosophy o…
『鬼の研究』で言及されていた天狗によるたぶらかし(幻覚)について、埃をはらって『古今著聞集』をひっぱりだしてきて該当箇所(怪異の巻)を読んだ。(月報に花田清輝が面白い話を書いていた。)天狗による幻覚の話(見たことがないご馳走を出される話)…
何の必要があったのか忘れてしまったけれども、しばらく前に必要があって、今はその必要がなくなったと思うけれども、とにかく(笑)、馬場あき子『鬼の研究』(ちくま文庫)を読む。鬼の話はもちろん楽しい。それとは別に、ちょっと気がついたことがあって…
欲しかった本が少し前にリプリントで出たので喜んで買った。文献は、Erasmus, Erasmus on His Times: a Shortened Version of The Adages of Erasmus,by Margaret Mann Phillips (Cambridge: Cambridge University Press, 2009) エラスムスは16世紀のベスト…
必要があって、現在の社会的入院の研究を読む。文献は、印南一路『社会的入院の研究―高齢者医療最大の病理にいかに対処すべきか』(東京:東洋経済新報社、2009)不適切な入院、あるいは社会的にみて適正さを欠く入院を社会的入院と呼んで、厚労省の180日以…
今日は無駄話。読んだ論文は、Dolan, Brian, “History, Medical Humanities and Medical Education”, Social History of Medicine, 23(2010), 393-405. 来年の4月から私立の医科大学の非常勤で医学史の講義をすることになっている。医学生のグループに向かっ…
必要があって、戦前北陸の結核についての論文を読む。著者は、後に公衆衛生のエースになった古屋芳雄。文献は、古屋芳雄「北陸地方農村結核の現状」『国民保健』vol.3, no.25(1939), 26-32; no.3, no.26(1939), 27-33. これは省略版で、図表が省略されている…
一連のTufte ものの別の本を読む。文献は、Tufte, Edward, Visual Explanations: Images and Quantities, Evidence and Narrative (Chesire, Connecticut: Graphic Press, 1997).この書物は特に印象が強かった。自分がよく知っている素材をもとに、クリアで…
『家畜人ヤプー』論のためのメモ。ゴルトンが死の前年の1910年から書き出した小説Kantsaywhere は、優生学のユートピアを描いた小説である。ゴルトンは優生学の福音を社会に広めるのに夢中であり、優生学の理想を広めるための小説執筆であった。書き上げたと…
必要があって、三共製薬の歴史をチェックする。文献は、山科樵作『三共五十余年の概貌』(東京:三共株式会社、1952)ほかに、60年史、80年史が書かれている。三共はもともと横浜で輸出絹物業を営んでいた塩原又助に、当時アメリカにいた高峰譲吉がタカジャ…
闘病記研究会シンポジウム闘病記の医学教育への活用「患者主体の医療」が問われる今日、患者の語りが医学教育に活用され始めています。闘病記や映像ツールを使った授業は、どのような形態で行われ、どのような学生の反応があるのでしょうか。患者を全人的な…
必要があって、戦前のペニシリン開発についてのルポルタージュの傑作を読む。文献は、角田房子『碧素・日本ペニシリン物語』(東京:新潮社、1978)筆者は、昭和戦前期の日本、特に軍隊のことについて多くの著書がある実力者のジャーナリストである。本書も…
必要があって「人種生理学」についての論文を読む。文献は、北村直躬「時局下の人種生理学(1)-(4)」『臨床大陸』vol.2(1940), no.8, 827-830; no.9,953-959; no.10, 1075-1087; no.11, 1205-1218. 人種についての医学は、その形態的な違いに注目していたが、…
必要があって、戦後のペニシリン産業の進展を記した書物を読む。文献は、武田敬一(著)・武田晴人(監修)『ペニシリン産業事始』(東京:丸善プラネット株式会社、2007)重要な史実が詰め込まれている必読の文献だと思うが、ここでは、性病のところ、特に…
必要があって、サルヴァルサンとペニシリンの国内製造で有名な「万有製薬」の社史を読む。文献は、『万有製薬株式会社 五十年の歩み』(東京:万有製薬株式会社、1964)もともとは第一次世界大戦でドイツからの薬の輸入が絶えた後、梅毒治療薬の「サルヴァル…
カレル・チャペックの戯曲『白い病気』を読む。田才益夫の訳で、八月舎という書店が出している『チャペック戯曲全集』に収録されている。チェコ語という言語的な制約のせいで「研究者」は少ないと思うけれども、チャペックは『ロボット』や『山椒魚戦争』な…
新国立劇場でオペラ『トリスタンとイゾルデ』を観る。大野和士が指揮した音楽は素晴らしかった。演出は、新国立に初めて登場するイギリスのデイヴィッド・マクヴィガーが、舞台・美術・照明などにおそらく自分の仲間のチームを引き連れて、美しい舞台を作っ…
古井由吉の濃密な精神病の世界から少し遠ざかるために、武田泰淳『富士』を読み返してみた。戦争末期の富士山麓の精神病院を舞台にした小説。小説自体が書かれたのは1969年から71年で、当時の日本の精神医学が置かれていた革命の夢想の気分が、小説に色濃く…
同じ古井由吉の中編を二つあわせた新潮文庫、『杳子・妻隠』を読む。「杳子」は芥川賞を受賞したというから、きっと初期の作品なのだろう。そう思って読むと、『聖・栖』において深みまで追及される、精神を病んだ女とその恋人の男がまるで共犯関係であるか…