Entries from 2015-03-01 to 1 month

精神病院の症例誌を読む練習6-P.S. について3

精神病院の症例誌を読む練習、特に処方が読めるようになる練習です。この2回ほど、頻繁に登場する薬である P.S. は何かということを論じ、「パンスコ」であるという私の仮説の他に、賦形剤であるという仮説、パラアルデヒドに関係があるという仮説などを頂く…

学者としての仕事の能率を上げること

The economy and productivity: Bargain basement | The Economist 『エコノミスト』の記事を読んで雑感。記事の内容は、イギリスでは労働力が安価で移民を中心に多数存在するので、企業は投資より安価な労働力に頼り、構造的に弱体化しているという話。そう…

『イミテーション・ゲーム』

飛行機の中で映画『イミテーション・ゲーム』を観る。BBCの『シャーロック』でブレイクしたベネティクト・カンバーバッチが、ケンブリッジ大の数学者で現代のコンピューター科学の礎を築いたアラン・テューリングを主演した映画。変人で同性愛者でマラソン・…

1815年のタンボラ火山の大噴火とコレラ菌の突然変異

http://www.lrb.co.uk/v37/n03/thomas-jones/awfully-present LRBで読んだ記事が面白かったのと、医学史上の重要なポイントがあったのでメモ タンボラ火山はインドネシアの火山で1815年に大噴火した。その噴煙や火山灰などは数年間地球の大気に漂って異常気…

胎児は「性を持たない」のか、それとも「両性具有」なのか

Brooks, Ross, “One <Both> Sex<es>: Observation, Suppositions, and Airy Speculatons on Fetal Sex Anatomy in British Scientific Literature, 1794-1871”, Journal of the History of Medicine and Allied Sciences, vol.70, no.1, 2015: 34-73. トマス・ラカーの</es></both>…

精神病院の症例誌を読む練習5 ―P.S. について2

昭和戦前期の精神病院の症例誌の処方を読む練習。次第に分かるようになってきましたが、一つ、頻繁に登場するのに分からない略号があります。それが P.S. 3.0 か2.0 与えられることが多く、本当によく出てくる略号です。私はこれが、「パンスコ」と略される…

精神病院の症例誌を読む練習4 ―P.S. について

昭和戦前期の精神病院の症例誌の処方を読む練習。次第に分かるようになってきましたが、一つ、頻繁に登場するのに分からない略号があります。それが P.S. 3.0 か2.0 与えられることが多く、本当によく出てくる略号です。私はこれが、「パンスコ」と略される…

人種差別の言説としての「アフリカの精神」論と、植民地時代・独立以降のアフリカの精神医学

Pringle, Yolana, “Investigating ‘Mass Hysteria’ in Early Postcolonial Uganda: Benjamin H. Kagwa, East African Psychiatry, and the Gisu”, Journal of the History of Medicine and Allied Sciences, vol.70, no.1, 2015: 105-136. 1960年代以降のア…

進化論者ウォレスはなぜ優生学に反対したのか?

Flannery, Michael A., “Alfred Russel Wallace’s medical Libertarinism: State Medicine, Human Progess, and Evolutionary Purpose”, Journal of the History of Medicine and Allied Sciences, vol.70, no.1, 2015: 74-104. ダーウィンと同時に進化論を…

症例誌を読む練習3 -- P.S.は「パンスコ」だろうか?

今日も症例誌の処方を読む練習を少しした。同じ薬が繰り返し使われるから、すらすらと読める部分が多くなって、これなら練習しながら読み進めれば大丈夫だと自信を持つようになる。同じ薬が繰り返しと書いたが、これは王子脳病院がすべての患者に千篇一律で…

アートフェア東京2015 飯山由貴さんの展示

アートフェア東京2015で、飯山由貴さんの作品を観る。恵比寿の画廊の waitingroom による展示で、飯山さんの過去の展示の作品と、新作が紹介されている。Waitingroom のディレクターの芦川朋子さんに説明していただいたが、飯山さんは「リサーチ系」であると…

アートフェア東京2015

はじめてアートフェア東京に行った。会場は東京国際フォーラムで、広大なフロアに100を超える画廊やギャラリーがブースを出展している。初めて名前を聞いたり作品を観たりするアーチストの展示が多かったが、雑誌で読んだことがある作家や、作品を観たことが…

処方を読む練習2

処方を読む練習その2.だいぶ読めるようになった。昨日読めなかった部分で、解決したものもあり、まだ読めないものもあり、新たに出てきた不明もある。 31/V Aq K N. 100.0 Inf. Valerian 4.0 Opii 1.0 P.S. 3.0 Veronal 0.4 Cod. Phosph. 0.04 Luminal 0.06…

昭和期の処方の読み方

皆さんに教えていただいて処方が少し読めるようになった。『正しき処方について』(大正15)、薬局方、そして最新医薬品類聚という医薬の商品名が掲載されているレファレンスが必要。それでもまだ分からないものが3割くらいある。特に、P.S. という薬品は、…

英語のディスカッション能力について

昨日の記事の続き。大学院生などの若い研究者に英語の報告をさせる仕掛けについては、おおよそのことが分かった。毎週英語を書く仕掛けと、学期末か年度末に英語のワークショップをすることである。その部分はだいたいわかった。 一方で、英語でディスカッシ…

大学院セミナーと英語ワークショップ

3月11日に、慶應日吉キャンパスで、2014年度の大学院のセミナーの「締め」として、出席した学生とPDを中心にして、英語で報告・ディスカッションをするワークショップを開催した。これは、私としては初めての試みで、大きな手ごたえがあった。以下、簡単に説…

ペスト対策とホノルル・チャイナタウンの大火(1900年)

Mohr, James C., Plague and Fire: Battleing Black Deatg and the 1900 Curning of Honolulu’s Chinatown (Oxford: Oxford University Press, 2005). 19世紀末から20世紀中葉のペストの流行は、主にインドと中国で大きな被害を出したが、小規模・中規模な被…

B級SF映画?(笑) - がんとキャンサーの画像(1950年代)

Patterson, James T., The Dread Disease: Cancer and Modern American Culture (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1987). がんの歴史について、アメリカの19世紀末から20世紀後半までを扱った標準的な本を入手した。ペラペラと眺めた範囲では、…

「症例誌を読む」ワークショップ(3月12日・13日)

症例誌は、カルテや診療録などとも呼ばれ、医療の臨床についてのもっとも豊かな史料として、過去30年ほどの医療の歴史の中核的な史料として用いられてきました。このワークショップは、昭和戦前期の東京の私立精神病院のアーカイブズの症例誌を読んで分析し…

医学史・大学院セミナー(3月11日)

2014年度の大学院のセミナーに出席した学生やPDを中心にして、英語で報告・ディスカッションをする会を開催します。大学院の頃から、英語などの外国語を用いてアカデミックな場で活躍するためには、練習を積むことが大切です。 3月11日に慶應義塾大学・日吉…

『風と共に去りぬ』と、マラリアにならない邸宅の令嬢

char Charles C. Mann, 1493: Uncovering the New World Clumbus Created (2011) を読んでいて、マラリアがある土地でどのように家を建てると感染を防ぐことができるかという議論の中で、『風と共に去りぬ』の有名な画像が使われていたので、来年度の授業で…