Entries from 2018-05-01 to 1 month

戯作禁止からオペラ『源氏物語』へ

歌舞伎座の会員誌の『ほうおう』7月号を読んでいたら、好奇心が高まる公演の情報。7月の歌舞伎座は市川海老蔵が昼も夜も宙乗りで主役を演じるものである。昼は太閤もので、夜は源氏物語である。歌舞伎座で源氏物語を劇化することは、太平洋戦争の敗戦まで…

精神病院などの身体拘束の激増について

医学書院/週刊医学界新聞(第3274号 2018年05月28日) 週刊医学界新聞が精神科の看護師たちにインタビューして患者の身体拘束の記事を掲載。身体拘束自体はこの10年間で2倍に増えるというよくわからない現象。精神病床はゆるやかに減少しているのに、身体拘束…

ジェレミー・グリーン先生と4つシンポジウム(慶應三田 6月10日―23日)

慶應文学部の北中先生が組織し、社会学研究科の博士課程の院生で学術振興会DCの三原さやかさんが助ける形で、アメリカの医学史の名門、ジョンス・ホプキンズ大学の先生のジェレミー・グリーン先生を軸にした多様な医療人文学の分野にわたるシンポジウムが合…

身体各部から作られるマーケット、病院での死、家庭での死

Pfeffer, Naomi. Insider Trading : How Mortuaries, Medicine and Money Have Built a Global Market in Human Cadaver Parts. Yale University Press, 2017. 昨年刊行された医学史の著作がとても面白そう。重要な臓器の移植は腎臓、心臓、肝臓、肺などがあ…

第6回リサーチ・ショーケース開催のご案内

オクスフォード大学出版局から、イギリス史に関する処女作を英語で刊行した山本浩司先生からいただいたご案内。英語で歴史学を発表するリサーチ・ショーケース。とても多くのメリットを持つ集まりだと思います。ぜひご参加を! 第6回リサーチ・ショーケース…

広島と長崎の原爆被爆者の医療的な側面について

https://forgedbyfiresite.wordpress.com/2018/05/08/learning-from-the-a-bomb-atomic-flash-burns-in-hiroshima-and-nagasaki/ イギリスのバーミンガム大学のジョナサン・ライナーツ先生が3か月ほど広島と長崎に滞在され、原爆の被爆者の被害研究をされま…

1857年のナポリの地震被害の優れた報告書が古書店に出ました!

http://www.nigelphillips.com/http://www.nigelphillips.com/p/catalogue 医学の古書を愛好家に売る古書店というディープなものは、日本にも外国にもある。イギリスには Nigel Phillips という科学や医学の古書を専門に売る古書店があり、カタログを見てい…

幸田露伴『対髑髏』 田中キャサリンの論文

田中キャサリン「怪奇小説におけるハンセン病の肖像―幸田露伴『対髑髏』を中心に」『大手前大学論集』16号(2015), 89-124. 幸田露伴が1890年に刊行した小説『対髑髏』についてのメモを書いた。これは、ハンセン病の患者を描いている部分があること、その部分…

ただ一人カンヌ映画祭で受賞した女性監督の作品

www.economist.com カンヌ映画祭で『万引きする家族』が受賞した。是枝監督をはじめとする皆様、受賞おめでとうございます!『エコノミスト』がこれを良い意味で好評した記事がとても面白い。この賞を受賞した女性の映画監督はただ一人。私がロンドンに住ん…

津山事件と結核の影響

中村, 一夫. 自殺 : 精神病理学的考察. vol. B-5, 紀伊國屋書店, 1963. 紀伊國屋新書. 中村一夫という精神病医の『自殺論』に津山事件についての素晴らしい説明が入っていたのでメモ。 津山事件は昭和13年に岡山県の西加茂村で起きた大量殺人事件。都井睦夫…

幸田露伴「対髑髏」における精神疾患とハンセン病

幸田露伴が若き日に名声を確立した小説が「対髑髏」である。1890年(明治23年)に刊行されて、全集の第一巻に収められている。文章、漢字、成句などが超絶的に難しいが、実際に名作であるし、ふりがなが大いに助けになる。医学史としても非常に面白い主題で…

ハッキング『マッド・トラベラーズ』の書評が出ました!

『図書新聞』3352号(2018年5月26日)に、イアン・ハッキング『マッド・トラベラーズ』(2017) の書評を掲載しました。いくつかの側面で面白い著作です。ある概念の精神疾病の歴史を書く時の「生態学的なニッチ」と呼ばれる方法論、欧米各国を比較する方法、…

女性と科学についての作品の劇評(北村 紗衣先生)

igakushitosyakai.jp 「医学史と社会の対話」の新しい記事です。DNAの構造解明につながる研究を行った女性学者ロザリンド・フランクリンを主人公にした演劇が2008年に作られ、アメリカやイギリスで上演されています。それを翻訳した作品が2018年の4月に東京…

巨人の星、ターザン、ヨガ

幼いころから今までのエクササイズのモデルが変わっている。一番幼い頃から高校生くらいの時期が巨人の星、大学生から大学院生がターザン、そして現在はヨガになった。変わったのか加齢の結果なのか、それともまったく変っていないのか、よくわからない。 幼…

記録と再現の問題ー中世イタリア商人からのメモ

今書き出している本で、記録と再現の問題を少し論じる部分がある。精神医療の歴史というものは、実際の治療の現場に関する史料が現れると、そのイメージが大きく変わるものである。この30年ほどの精神医療の歴史の本流は、少なくともイギリスにおいては、実…

Ken Daimaru on military medicine in the Russo-Japanese War

Daimaru, K. (2017). Preserving the Health of the Army in Modern Japan. Military Medicine in the Russo-Japanese War. . (PhD), University of Paris, Nanterre / Birkbeck, University of London, Paris / London. Dr Ken Daimaru has just received P…

長与又郎のセメント胸像

學士會会報の930号の表紙は、東大医学部の学部長であった長与又郎の胸像である。長与又郎(1878-1941)は名家に生まれた著名な東大医学部の教授である。父親は長与専斎(1838-1902)で、肥前国の出身で適塾や長崎のポンぺに学び、明治政府の衛生局長となっ…

シェイクスピアの義理の息子である17世紀の医師の症例誌

Lane, J. (1996). John Hall and his patients : casebook of a Stratford practitioner: Alan Sutton. 大学院の授業で良いテキストを取り上げることができた。基本は17世紀のイギリスの医師の症例記録である。医師の名前は John Hall (1575-1635) である。…

バラのヘリテージとデズデモナ

連休も終わり、天気は少し崩れてくるとのこと。庭のバラも数日間一休みという感じになります。ヘリテージという保守そのものの名前をつけたバラが咲き始めました。もう一枚の白はデズデモナです。

サルトルとラカンとメスカリン

www.thevintagenews.com FBでポルス先生がアップロードしたサイトで、サルトルとメスカリンとラカンに関する面白い記事。 サルトルは1920年代から30年代にパリの大学校でメスカリンなどのクスリを用いたこと、その刺激を通じてインスピレーションを得ようと…

花柳病と性欲と食餌について

福田, 眞人.(2009). 病院と病気 (Vol. 55): ゆまに書房. 大正期と昭和戦前期に刊行された三冊の書物を復刻し、福田先生の解説を付した書物である。三冊の書物は、澤田順次郎『花柳病院』(1913)、ヨゼフ・ベルトラン『神山癩病院概況』(1914)、杉山幹『脳病院…

電気ショック療法の歴史的な意味と現在の意味の転換へ

www.bbc.com 日本の精神医療の制度的な体制、特に精神病院と病床数が世界で圧倒的に多いのを改革しなければならないという動きが始まっている。それにともなって、精神病床が増えていく時期によく使われたロボトミーやECT(電気ショック療法)などのネガティ…

東京の<きつねそば>

カルピスでちょっと書いた<東京のきつねそば>の問題は、私はずっと時々考えている。あまり意味がないなという気がしばらくしているのだけれども(笑) 関西の「きつね」はキツネが好きな油揚げを乗せたうどん。うどんではなくてそばを使っているのが「たぬ…

カルピスとお屠蘇の問題再訪

『変態心理』が大正10年1月に刊行したものに、お正月にお酒や味醂で屠蘇を飲むと、本人だけでなく子供も瘋癲や白痴や不良少年少女になるから、お屠蘇をカルピスで飲もうという宣伝が出ている。面白いのは、読み手だけでなく、読み手の子供が強調されるという…

シドニーでの精神医療史のマスタースクールについて

先日広報したシドニーでの精神医療史のマスタースクールについて。ハンス・ポルス先生からさらなる通信をいただきました。全文を下に掲載いたします。 1970年代の反精神医学やミシェル・フーコーが刺激した精神医学史の視点が、どのように変化してきたか。 …

バラの開花が本格的に始まりました。

雨気味の水曜日ですが、バラの開花が始まりました。今朝の7枚の画像です。私が一番好きなのは冒頭の小雨で花びらが痛み始めたバラに蜘蛛がいるものです。バラの名前はデズデーモナ。オースティンの傑作です。

精神医療史の方法論をマスターするコース(シドニー)

historypsychiatry.com 8月にシドニーで開催される精神医療の歴史の方法論などをマスターするコース。期間は5日間である。大学院生とキャリアの初期の研究者が対象というから、かなり高度な標準だと思う。軸となるのはハンス・ポルス先生とマーク・ミケーレ…

芸術新潮とスワスティカとハーケンクロイツについて

芸術新潮でいい記事を読んで、スワスティカについて Wikipedia を調べる機会があった。スワスティカについての記事もすぐれた記事であること、それから、ハーケンクロイツという言葉をきちんと使わなければならないと思った。 芸術新潮の2018年5月号が、全体…