Entries from 2018-01-01 to 1 year

古川柳くすり箱と「検印」

鈴木昶. 古川柳くすり箱. 青蛙房, 1994. 鈴木昶の仕事の一つである『古川柳くすり箱』。大学では文系であり、卒業後薬剤師となったユニークな人物だけあって、書かれたものはとても面白い。病気ー医者ー薬種ー風俗と主題を分けて、それぞれを幾つかのジャン…

昨年と今年の論文など

keio.academia.edu ここ数年の怠けぐせで、業績などのアップロードがとても遅れていました。この冬休みに色々と直します。今朝はとりあえず、去年と今年の業績の英語論文3本、石原あえか先生のムラージュに関するご高著の書評をアップロードしました。

新国立劇場『ファルスタッフ』

www.nntt.jac.go.jp 新国立劇場でヴェルディのオペラ『ファルスタッフ』を観ました。二度目か三度目ですが、いつも通りとても楽しかったです。 演出はジョナサン・ミラー。ミラー先生は医学者であると同時に演劇やオペラの演出家でもある。それからもう一つ…

Social Science Diliman vol.14 (2018) の特集号です!

Social Science Diliman の2018年の第14号がアジア医学史の特集号です。以下をご覧ください。 Vol 14, No 2 (2018) フィリピンのディリマン大学の社会科学の紀要のアジア医学史の特別号を組みました。オクスフォードのマーク・ハリソン先生が編集長になり、…

国医薬物学研究(1941) の200件ほどの薬物の一覧表

清水藤太郎. 國醫藥物學研究. 広川書店, 1941. 偉大な薬学者で薬学の歴史に関しても大きな仕事を残した清水藤太郎。彼が1941年に漢方が用いる薬物のコンパクトな教科書を書いている。漢方や中国医学の薬物は10,000種類を超えるが、実際に用いるのは200種から…

伝承薬の都道府県別の件数一覧

鈴木昶. 日本の伝承薬: 江戸売薬から家庭薬まで. 薬事日報社, 2005. 70の伝承薬。基本のエクセルをまずざっと作ってみた。難しい個所が少しあったけれどもとりいそぎ。東京(江戸)、大阪、京都の三つの中心地が重要だということ。大坂と京都の周りも重要で…

忍者の薬である「忍術丸」の発見!・・・ではありませんでしたが、今度は「麦角」の問題です(笑)

鈴木昶. 日本の伝承薬: 江戸売薬から家庭薬まで. 薬事日報社, 2005. 薬の歴史の本をたくさん書いている鈴木昶(あきら)先生の書物をいくつか読んでいる。彼がまとめた『日本の伝承薬』がピックアップした合計70点の伝承薬を、一つの表にしてまとめてみる仕…

川柳くすり百景

鈴木, 昶. 川柳くすり百景 : 薬日柳壇の半世紀から. 薬事日報社, 2006. 薬事日報新書. 1955年から2005年の『薬日柳檀』から面白い川柳を選んだ本である。『薬事日報』という雑誌が年に4回だす特集号があり、そこに川柳欄が1955年に作られた。そこからとった…

19世紀後半の男性同性愛者の自伝のコレクション

Peniston, W. A. and N. Erber (2007). Queer lives: men's autobiographies from nineteenth-century France. Lincoln ; London, University of Nebraska Press. 19世紀フランスの同性愛者の自伝を8編ほど集め、編集して英語に訳した非常に便利な著作。2007…

キナとキニーネの研究者の伝記

Howard, John Eliot (1807–1883), quinologist | Oxford Dictionary of National Biography 昨日の歴史学の授業は20世紀のマラリアの話をして、その中でマラリアに有効とされていたキニーネの話をした部分があった。たまたま、今日の Oxford DNB は、19世紀…

順天堂大学の女子受験生の大学入試の方針に関して

順天堂大学。医療の中でさまざまな優れた分野をお持ちかと思います。その一つが医学史です。あるいは医史学という呼び方をしています。その講座を設立した素晴らしい医科大学です。現在、我々が享受している医学史のかなりの部分は、順天堂大学が大きな推進…

石原あえか先生の近著『日本のムラ―ジュ』の書評

ドイツ文学のゲーテ研究者であり、科学史の研究者としても名高い石原あえか先生が『日本のムラ―ジュ 近代医学と模型技術:皮膚病・キノコ・寄生虫』(2018) という著作を出版されました。たまたま、その書評を書くという光栄をいただきました。色々な意味で素…

1918年11月11日11時・・・ではなかった

Pospect の イン・ファクト。今月も面白く悲しいので、幾つかをメモ。 2017年の中南米のコロンビア。17万ヘクタールの巨大なコカノキが栽培されており、1,300トンのコカインが生産されたという。 ゾンビにアタックされたときにどうするかを考えたことがある…

庭のバラがまだ咲いています

庭のバラがまだ咲いています。12月8日というのは珍しいのかもしれない。上から、デズデモーナ、グレアム・トマス、チャールズ・レニー・マッキントッシュ、そしてひらりねこです(笑) デスデモーナ グレアム・トマス チャールズ・レニー・マッキントッシュ …

身分制と製薬士と薬剤師

吉岡信. 近世日本薬業史研究. 薬事日報社, 1989. これも非常に優れた書物である。日本の薬をサプライする薬業者たちを、自然科学と身分制の二つの概念で考えて、江戸時代から明治時代への断絶と連続をきちんと論じている素晴らしい議論である。 議論としては…

『国医薬物学研究』(1941) の強壮剤と梅毒対策

清水藤太郎. 國醫藥物學研究. 広川書店, 1941. 清水藤太郎という日本の薬学史の巨人がいる。天野 宏 (著), 百瀬 弥寿徳 (著)『まず薬局へおいでなさい―薬学の巨人清水藤太郎』 (2014) はまだ読んでいなかったが、Wikipedia の情報は急所を押さえた的確さを持…

History of Psychiatry の最新号 29:4 (December 2018)

History of Psychiatry の 29巻4号 の目次。スカル先生が書き、ギリシア哲学と中世にあり、19世紀のオスマン帝国について、グリージンガーの自殺論、そして長いこと編集長であるべリオス先生によるドイツ語テキストの翻訳。 Creating a new psychiatry: on t…

ベルギーのアフリカ博物館のこと

Home | Royal Museum for Central Africa - Tervuren - Belgium myafricamuseum.be エコノミスト・エスプレッソの土曜日は文化系の記事で、正直に言うと、それらを読むのが一番楽しい曜日である。今日のトップ記事は、ベルギーのテルヴューレン (Tervuren) …

アンネ・フランクのうつ病とセイヨウカノコソウという薬

今日はもう仕事を終わる。最後にアンネ・フランクのマンガ版に出た薬を調べた(笑)アンネがうつ病になりセイヨウカノコソウ (valeriana officinalis) を飲んでいて、これが薬草か錠剤かという、誰にとってもどうでもいい話。 今のところどちらの可能性もあ…

武田製薬が Shire を買い取ったこと

www.economist.com 武田製薬がアイルランドのベンチャー企業であった Shire を買い取った。これは日本の企業による最大の海外企業の買い取りであるとのこと。そのことに関するエコノミストの記事を読みながら、色々と考える数分間があった。医学史研究につい…

東京のスモッグと小学生における心因性疾病の集団発生ー1970年代と80年代の見解の大きな違い

Araki, Shunichi and Tetsou Honma. "Mass Psychogenic Systemic Illness in School Children in Relation to the Tokyo Photochemical Smog." Archives of Environmental Health, vol. 41, no. 3, 1986. 東京の大森の中学校などで1970年から1972年に起きた…

症例誌と情報学:その構造と利用の仕方

Hess, Volker. "A Paper Machine of Clinical Research in the Early Twentieth Century." Isis. vol. 109, no. 3, 2018, pp. 473-493, doi:10.1086/699619. アメリカの科学史学会の機関誌である Isis に掲載された論文。新しい方向を切り開く非常に優れてい…

石原孝二『精神障害を哲学する』の合評会へのご案内

合評会 石原孝二「精神障害を哲学する:分類から対話へ」(東京大学出版会) | Events | University of Tokyo Center for Philosophy 石原先生の著作の合評会のお知らせ 石原先生のご著作「精神障害を哲学する」の合評会が1月12日の午後に開催されます。私は…

感情の歴史入門と外科手術

Boddice, Rob. The History of Emotions. Manchester University Press, 2018. Historical Approaches / Series Editor, Geoffrey Cubitt. Boddice, Rob. The Science of Sympathy : Morality, Evolution, and Victorian Civilization. University of Illino…

精神医療の博物館ーベルギーのゲントのギズラン博物館

www.museumdrguislain.be historypsychiatry.com h-madness から。ベルギーはゲントにあるギズラン博物館が面白い展示を行うとのこと。ギズランは、ベルギーとヨーロッパの精神医療のパイオニアの一人であるジョゼフ・ギスラン (Joseph Guislain, 1797-1860)…

忍者と万川集海と薬の不在(笑)

吉丸, 雄. and 雄. 山田 (2017). 忍者の誕生, 勉誠出版. 藤林, 保. and 篤. 中島 (2015). 万川集海 :完本, 国書刊行会. 笑われるかもしれないけれども、一応、忍者に関する書物の現代語訳があることが分かって、取り寄せて読んでみた。笑われるかもしれない…

武田製薬は237年、明治が150年、Shire は設立30年であること(笑)

www.shire.com 明治維新の前と後の社会史に興奮した後、普通にメールをチェックしていて、エコノミスト・エスプレッソで武田製薬の記事をが面白かった。武田製薬が、アイルランドにベースを持つ Shireという薬品会社を買い取るかどうかの投票があるとのこと…

『「明治150年」で考えるー近代移行期の社会と空間』を頂きました!

『「明治150年」で考えるー近代移行期の社会と空間』(山川出版社、2018) を頂きました。書物の帯は、「明治維新期の意味を、社会史の深みから、ふつうの人々の視座から、捉えなおす」と語っている、とても優れた傑作のようです。イェール大学のボルツマン先…

マンガ版アンネ・フランクとうつ病の民間療法

Frank, Anne. Adaptedby Ari Folman. Illustrated b David Polonsky. (2018). Anne Frank's Diary: The Graphic Adaptation. New York, Pantheon Books. アンネ・フランクの日記の英語マンガ版を読み返してみた。『アンネの日記』は少年時代に読み、そこそこ…

欲望と『グロテスク』とプリンツホルンの挿絵

グロテスク. "錯覚で描いた狂人の傑作展覧会." グロテスク, vol. 4, no. 1, 1931. Prinzhorn, Hans. Artistry of the Mentally Ill : A Contribution to the Psychology and Psychopathology of Configuration. [2nd ed] edition, Springer-Verlag, 1995. 『…