Entries from 2019-01-01 to 1 month

<ジャンル>と狂気の意義づけという視点

Huot, Sylvia Jean. Madness in Medieval French Literature: Identities Found and Lost. Oxford University Press, 2003. 中世フランス文学における狂気の表現を分析した書物。最初はルーティーンのチェックのつもりで開いたが、読み始めたらとても重要な…

英語教育と「内なる外国人」の発想

北山修 et al. 「内なる外国人」: A病院症例記録. みすず書房, 2017. どう面白いのかよく分からないけれども、博士とポスドクの7年間を英語で訓練された自分はどうなるのだろうと考える書物。大きな訓練を英語や外国語でしている学者は考えると面白いと思う。…

春の英語セミナー+George Makari 先生

例年の英語セミナー、3月23日(土曜日)に実施いたします。ご自身の関心がある主題について、ぜひ英語で論文発表をしてください。 それを希望する方は、私にご連絡ください。 今回の特別アトラクションは、NYとコーネル大学の精神科医、ジョージ・マカリ先生…

ヴェスパの歴史と神話

www.academia.edu 私はオートバイの免許を持っていないが、憧れるものの一つである。自転車は好きだったし、自転車とオートバイを合体させたマシンはもちろん買った。オートバイの技術や歴史はきっと面白いだろうと思う。オートバイと言っても、ナナハンとか…

1900年のアヘンチンキの国際比較

日本の薬学の歴史において、<日中薬用量相違>という問題がある。私が知る限りでは貝原益軒『養生訓』が最初にそれを指摘している。それから300年ほど続いている(と思う)大きな謎である。 簡単に言うと、同じ薬であるのに、日本と中国を較べたときに、薬…

中尾さんから論文集を頂きました!

長崎大学の医学部で、20世紀の科学や医学の歴史研究の国際的な拠点を築いている中尾麻伊香さん。『科学者と魔法使いの弟子ー科学と非科学の境界』という書物を頂きました!これまで書いた中尾さんご自身の論文を集めた書物です。ぜひお読みください! 長崎に…

チョコレートとココアの魅力の第二弾(笑)

akihitosuzuki.hatenadiary.jp 実佳がロンドンからホットチョコレートを買ってきた。もちろんとても美味しい。1年ほど前に、ココアとホットチョコレートの違いを知り、ホットチョコレートは高価だけどやはりおいしいねという動機があったから、ロンドンで買…

アンソロポシーン Anthropocene の多様性の問題

www.academia.edu 日本学研究者の Julia Adeney Thomas 先生。アンソロポシーン Anthropocene の問題を取り上げた記事。簡潔で明晰な表現でその複雑さを表現しています。 Anthropocene という言葉の日本語訳の問題。「人新世」という語が使われているようで…

朝鮮の庭と薬草と植民地時代の教化について

https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20190127180747.pdf?id=ART0000850470 久保, 賢. 在鮮日本人薬業回顧史. 在鮮日本人薬業回顧史編纂会, 1961.に掲載の論文から、朝鮮には家に庭を作り、そこに薬としての機能を持つ植物を植えるかどうかという議論が…

薬の歴史の背景

道教と医学の間には強い関係が存在した。ことに、医学の中でも本草に対して道教が持った影響は、中国と日本においても、古代と中世において、より強力であった。古代のアニミズムと宗教を強く持つ道教は、似たような傾向を持つ医学と結びついていた。ことに…

聖書と万葉集の植物比較

中尾, 佐助. 花と木の文化史. vol. 黄版 357, 岩波書店, 1986. 岩波新書. この本を読んでいたら、聖書と万葉集の植物比較があった。どう解釈するのか私にはまったく分からないが、一つ面白いのは、食べ物や果物や薬のような植物ばかりである聖書に対して、万…

週刊医学界新聞と阿川佐和子さん

www.igaku-shoin.co.jp 今週の医学界新聞では、哲学者の村上靖彦先生と看護・リハビリセンター所長の藤田愛先生の対談。村上先生の質問と藤田先生のお答え、どちらも面白かった。それを書こうと思って週刊医学界新聞のサイトを見たら、先週の阿川佐和子さん…

植物のカラー(オランダカイウ)の毒性について

しばらく気になっていた中世ヨーロッパの植物の本草学について。中世の英語で書かれている写本で、大英図書館が所蔵している。そこに毒蛇も描いてあることが、毒性をあらわしているのだろうなと予想させる。少し調べてみた。 British Library 所有の写本より…

フロイト家・ティファニー家・戦間期ウィーン

historypsychiatry.com フロイト自身はなかなかお洒落だった。ウィーンという世界の都の一つで暮らし、富裕なユダヤ人たちを相手に開業していたことも大きい。フロイトの稼ぎのおかげで、彼の娘のアナ・フロイトも、富裕であり、芸術とかかわりながらウィー…

メキシコの「歩く魚」とゲノム利用とエイリアン

土曜日のエコノミスト・エスプレッソはいつも楽しい。今回も芸術と文化と科学が絡まっている。ピエール・ボナールという20世紀の画家の話、ケルンの国際スィーツ大会で菜食主義者向けのスィーツが出される話、冬のスポーツのリュージュ (luge) の話など、色…

メアリー・シェリーの人生と、その時期の動物実験の影響を描く映画

gaga.ne.jp 今日は午前中に仕事をして、午後には『メアリーの総て』という日本語タイトルの映画を見た。英語のタイトルは Mary Shelley である。『フランケンシュタイン』を書いた女流小説家である。今から30年以上前に『ゴシック』という映画を観たことが懐…

アメリカ合衆国に最初に導入された植物園

publicdomainreview.org Public Domain の面白い記事。18世紀末から19世紀初頭のアメリカ合衆国における医学がどのようにヨーロッパと接したかという大きな側面があり、その中で植物園の導入を取り上げている。重要な医師は デイヴィッド・ホジック (David H…

現代のくすり図鑑

木村, 美紀 and Hama‐House. 王様のくすり図鑑. じほう, 2016. 木村, 美紀 et al. 王子様のくすり図鑑. じほう, 2017. 木村, 美紀 and 三木謙次 . 皇帝の漢方薬図鑑 = the Emperor's Kampo Medicines Illustration Book. じほう, 2017. 慶應義塾が共立薬科大…

「大寒」には鶏が始めて乳を出す(笑)

大寒はしばらく前の1月20日。とても寒い時期で、確かに寒い。「鷄始乳」(にはとりはじめてにゅうす)とある。あるいは「雉乳」(きじがにゅうす)という記述もある。 これは、ニワトリがお乳を上げることかと思いました!実は、鳥が卵を産むことを言うとの…

19世紀末の日本の売春を題材にしたイタリアン・オペラ

今日はなぜかイタリアの話が続きます(笑) 偶然に『イリス』というピエトロ・マスカーニが作曲して1898年に上演したオペラの話が出てきた。プッチーニの『蝶々夫人』と並んで、19世紀末から20世紀冒頭の日本を素材にしたオペラである。主題は『蝶々夫人』と…

ムッソリーニ期のイタリアのLGBTと精神医療

historypsychiatry.com h-madness からの研究のお知らせ。ムッソリーニ時代のイタリアにおいて、精神医療、ファシズムの行政、そして LGBT の人々の語りが、どのような複雑な構造を描いたのかを研究するとのこと。同一の患者に対して、複数のタイプの史料が…

『精神科学と東アジア』中国語版が発売されました!

台湾の王文基先生 (Wen-Ji Wang) と巫毓荃先生 (Yu-Chuan Wu) が、『精神科学与近代東亜』(精神科学と東アジア)という論集を編んでくださいました。基本的には中国語の書物ですが、もともとは、英語、日本語、(おそらく)韓国語の論文が、中国語に翻訳され…

「医学史とはどんな学問か」に人間と技術を軸とした章を掲載しました

keisobiblio.com 「医学史とはどんな学問か」。啓蒙主義と医学を書く第7章をアップロードしました。16・17世紀は、人文主義、宗教改革、市民革命などを軸にしましたが、18世紀については、新しい軸として、技術の導入を強調しました。技術と身体の新しい関係…

感染症を素材にした映画の分析

mh.bmj.com BMJの医療人文学の雑誌 Medical Humanities から。感染症を素材にした映画を20点ほど分析している。映画は、1990年代から2010年代の初頭までに製作されたもの。特定の感染症で地球が襲われて、それを悪者が広め、ヒーローやヒロインが防ぐという…

新薬の Azygous! (笑)

今日の英単語は azygous. 意味は「単独の」「対になっていない」。もともとギリシア語の否定の意味 α と、絆や縁やくびきといった意味の ζυγόν を組み合わせた言葉。OED では17世紀に作られた、ネット上のOLED (というのかしら?)では19世紀に作られたと書…

BLの猫展

www.bl.uk 大英図書館 (British Library) が猫展。リサーチに行った折に楽しい無料の展示をどうぞ!ちなみに猫好きは categorical な人物で、犬好きは dogmatic な人物とのこと。中学生に時に聞いて、今でも意味が分からず、そして忘れないギャグです(笑)

森山直太朗「さくら」

友部先生が慶應で大きな研究資金で研究をしていた時に、同じチームで仕事をしていた斎藤君が京都の大学に職を得て、小さなパーティをすることになった。森山直太朗「さくら」が私たちの記憶に残る時代だった。永島さんが上手なヴィオラを、私がどうでもいい…

阿波の近世について・サポンとコッヒーは日本の新薬?(笑)

徳島県薬事協議会. 徳島県薬業史. 徳島県薬事協議会, 1988. 8代将軍吉宗が、18世紀の初頭に一連の医療の改革を行った。小石川養生所が作られて、日本ではごく稀な「病院」が生まれたこと、江戸やその郊外に薬草園が作られたこと、オランダ語ができる学者たち…

香月牛山『婦人ことぶき草』(1692)

とりあえず一冊の巻上1と巻上2を読んでおいた。 香月牛山. 婦人ことぶき草 : 香月牛山不妊・産育の世界. 燎原書店, 1986. およそ子なきの輩は、神に仏にあゆみを運びねがふもひとつのやうなれど、ただ名医に近付けて妻妾の気血たらざるところを補わばあし…

知的障碍児の収容院の廃院

https://twitter.com/AbandonedHosp/status/1086459386590048256 D'Antonio, Michael. The State Boys Rebellion. Simon & Schuster, 2004. これはアメリカのマサチューセッツのウォルター・E・フエルノルド発達研究センターの廃院部分。たまたまダウン症の…