病気の日常語の語彙の体系

未読山の中から、人類学者が書いた病気のボキャブラリーの構造分析を読む。文献はFrake, Charles O., “The Diagnosis of Disease among the Subanun of Mindanao”, American Anthropologist, 63(1961), 113-132.

 病気の民間分類の構造分析とでもいうのだろうか。ミンダナオのスバヌン族の日常における病気の命名の仕方を調べて、その命名の理論的な構造を分析したもの。隣接するほかの病気との対比で命名が行われる仕方や、病気の進行のどの時点の現象をさすのかによって同一の言葉の意味が変わっていく様子の説明が面白い。特に後者は「経過としての疾病」の概念に基づいて診断名を決めないと、なるほどこうなるのかと実感した。 昭和13年の民衆が用いた病名のコーパスをもっていて、これをどうにかして面白い使い方ができないかと思っていたので、いいヒントになった。

 関連した無駄話を少し。「風邪」という病名があって、お医者さんに言うと叱られるけど、素人同士では堂々と使う。この意味合いが、少し変わってきた気がする。「風邪」が、昔はなかった、「インフルエンザでないもの」という意味を持ってきたと思いませんか?