必要があって、シュレディンガーの「生命とは何か」を読む。文献は、Schroedinger, Erwin, What is Life?: with Mind and Matter and Autobiographical Sketches (Cambridge: Cambridge University Press, 1967).
1944年に出版されたシュレディンガーの「生命とは何か」は、DNAの構造を発見したワトソンとクリックにインスピレーションを与えた書物として名高い。(私はこのあたりの歴史が苦手で、何がどう似ているのか、説明を読んでもよく分からないけれども・・・)今回チェックしたかったのは、ネガティヴ・エントロピーの概念である。私が理解した範囲では、シュレディンガーはだいたいこのようなことを言っている。万物においては、時間の経過とともに無秩序が増加して、エントロピーが増大する。我々の世界は「熱的な死」に向かって老いていく。この例外が生命であって、生命体は、食物などの形で有機物を分解して外に排出しつつ、自らの内では高度な秩序を保ち続ける。この生命体の特徴をシュレディンガーは「秩序を周囲から吸い込んで、無秩序を吐き出す」と表現した。生命体は自らの秩序を維持するために周囲の秩序を消費している組織であるというのは、ものすごく魅力的な概念である。サイエンスのテクニカルな部分がよく分かっていないのにこういう概念を振り回すと、アラン・ソーカルの『知の欺瞞』でこっぴどく叩かれた科学論者の二の舞になってみっともないので、私は使わないけれども、今度のセミナーでちょっとだけシュレディンガーに触れてみよう。