日本文化の本質としてのバブル経済文化


 昨日と同じ著者の『奇想の図譜 からくり・若冲・かざり』(ちくま学芸文庫、2005) を詠む。

 北斎、若冲白隠などを中心に、絵解きの妙を味わうことができる。北斎が馬琴の読本につけた挿絵が、オランダからもたらされた博物学書などにヒントを得ていたこと、「富岳三十六景」の「神奈川沖浪裏」の砕け散る波頭の分析など、知られていない作品と有名な作品をとりまぜて縦横に論じている。どれも面白い。

 最後の節で、日本文化の特徴を「かざり」と捉える論考があった。西洋の純粋芸術に対して、日本文化は生活の中での装飾文化に宿るという、スケールとしては一番大きな論考である。豪華な飾り、一夜限りの浪費としての祭り、賑やかなハレの空間―これらの特徴が日本文化の本質であるという論考が書かれたのは、云うまでもなくバブルの最盛期の1988年である。同年に筆者は東京の三越で「かざり文化展」を企画し12万人の入場者を記録したという。これほどまでに、バブル経済を日本美術史にべたに読み込んで、バブリーな消費の雰囲気こそが日本文化の特質だと論じた論考も少ないだろう。文庫に収めたということは、著者が気に入っている論考なのだろうが、読んだあと、色々な意味で、ちょっとやるせない気持ちになった。 それ以上のコメントはここでは勘弁してください。

 画像は、舟木家の「洛中洛外図」。 この分析は出色。