『イタリア古寺巡礼』

出張中の雑駁な読書の記事が続きます。岩波文庫和辻哲郎『イタリア古寺巡礼』を読み返す。

 和辻が1927年にイタリアを訪れた時の旅行記。有名な街の観光名所、有名な建築や美術作品などを批評し、汽車の窓から広がる光景や植生を観察して有名な『風土』のアイデアを得ている。

そうそう、このエピソードを書かないと(笑)。和辻は、ボローニャあたりで蚊に刺されてマラリアに感染し、ヴェニスに滞在している間に発熱が始まり、キニーネを飲んで治したりしている。

 これまではあまり気がつかなかったのだけれども、和辻はこの本で色彩に非常に興味を持っている。空の色、オリーブ畑が作り出す色、野原の色、牧場の草の色、建築物の色。絵画についてももちろんそうで、構図などは既に日本にいる時に写真で見て知っているわけだから、色彩に最も大きな注意を払っている。白黒写真時代の美術愛好家は、みんなこうだったのだろうか?

 ここで意表をついて、久しぶりにクイズを(笑)。次のコメントは和辻がイタリアで見たある作品について述べているものですが、その作品とは何か分かりますか? 

○○もまた写真で見て想像していた時のほうがよかったと思う。色彩という点ではあまり優れた人とは思わない・・・全体の色調は何となく眠そうな、鈍い調子である。写真で想像していた、デリケートすぎる神経の慄え、といったようなものは色彩の上では見出すことができなかった。

答えが分かった方は「内緒」でお願いします。