猫とともに去りぬ

出張中の雑駁な読書ノートもこれで終わり。イタリア出張だから、知らないイタリアの作家の本を読んでみようと思って、適当に選んだ本を読む。ジャンニ・ロターリ『猫とともに去りぬ』関口英子訳(光文社:古典新訳文庫、2006)

 寡聞にしてロターリという作家は初めて聞く名前だが、1920年生まれのイタリア児童文学の第一人者で、『ファンタジーの文法』は児童文学の理論書として有名だそうだ。この『猫とともに去りぬ』は、ロターリの短編を集めたもので、現代文明への風刺が利いたものが多い。表題作は有名なローマの猫を題材にしたもの。子供といっても中学生くらいを対象にしたもので、誰もが知っている物語を下敷きにしている。「白雪姫」を下敷きにして、世の中で一番美しい車は誰の車?と訊くとそれに答えるバックミラーの話とか、「シンデレラ」を下敷きにして、全宇宙舞踏会で、金星の青年大統領に見初められる地球の娘の話とか。翻訳は日本の大人の読者を念頭においているのか、大人向けの文体で中学生向けのシンプルな筋立てのストーリーを読むのが、なにか不思議な感じだった。

刻至深更。正十二時。姫忽然走。衆惑騒。隻靴脱落。不拾而去。

中国のシンデレラってこんな感じなのだろうか(笑)