円谷プロ風の黙示録



 未読山の中から、初期近代ヨーロッパの宗教、戦争、飢饉、疫病と死の社会史と文化史をまとめた書物を読む。文献は、Cunningham, Andrew and Ole Peter Grell, The Four Horsemen of the Apocalypse: Religion, War, Famine and Death in Reformation Europe (Cambridge: Cambridge University Press, 2000). 

 著者たちは初期近代の医学史の優れた研究者だから、つい惹かれて買ってしまったけれども、どちらも広く深い視点で社会と文化の歴史を語るタイプの学者ではない。記述は、きっと正確なのだろうけれども、平板で浅く羅列的。黙示録の四騎士になぞらえられたそれぞれの主題は、相互に有機的な関連はほとんど付けられていない。ありていに言ってミレニアムの便乗本である。

 一つのお買い得は、画像が沢山使ってあることで、画像でみる初期近代ヨーロッパ社会史入門的な性格を持っていること。私が見たことがない、面白い画像ばかりだった。そのうちから二つ。30年戦争の最中の1632年にプロテスタントのグスタフ=アドルフがドイツのカトリックの都市を次々と攻略した。これはプロテスタントから見ると、邪教から都市を「解放した」ことになり、そのようなメッセージを伝える版画が作られた。前者は、アウグスブルクが、二匹の怪獣に攻囲され、うち一匹の口から邪教を伝える偽りのものたちが吐き出されて街に送り込まれているありさまが描かれている。もう一つは、この二匹の怪獣をグスタフ=アドルフが倒したありさまで、一匹の怪獣の長い尾は、プロテスタント軍が「解放した」ミュンヘンにまで伸びている。