20世紀の<がん>

 目を通すのを忘れていた新着雑誌が、20世紀の<がん>の歴史の特集号。第一人者による面白そうな研究が目白押しだけれども、いまはじっくり読んでいる時間がないので、イントロダクションだけ読む。文献は、Cantor, David, “Introduction: Cancer Control and Prevention in the Twentieth Century”, Bulletin of the History of Medicine, 81(2007), 1-38.

 <がん>が20世紀の医学史を語る上で核になる病気であることは間違いない。今まで20世紀の医学の歴史も研究してきたのに、<がん>の歴史について何も知らないのは、言い訳ができない。言い訳しないで心を入れ替えて勉強しますから、どうかこれまでの無知と怠慢をお許しください(笑)

 カンターの記述もこの特集号も、英米を中心にしたものである。英米のがんコントロールの歴史では、20世紀前半から1960年代までの「早期発見・早期治療」のパラダイムから、20世紀の後半の「予防と生活習慣」のパラダイムへの重心の移行を中心に語られることが多かったそうだ。この論文集は、このモデルを再検討しようというものである。全体を読んでいないから断言はできないけれども、間違いなく必読の文献だろう。

 一つはっとした論点を。<がん>の治療においては、異なった時期に開発された治療法が重層をなしていて、新しい治療法が開発されても、それが以前の治療に「取って代わる」のではなく、既存の治療法に付け加わることで、治療の意味を少しずつ変えていくという指摘である。がん治療の現場を考古学的に考えることができるということなのか。よく考えたら、がんに限った話ではないのかもしれない。