ゼノドケイオン―ビマリスタン―ホスピタル

未読山の中から、古代の中近東における<病院>の歴史を論じた論文を読む。文献はAllan, Nigel, “Hospice to Hospital in the Near East: an Institute of Continuity and Change in Late Antiquity”, Bull.Hist.Med., 64(1990), 446-462.

古典古代からキリスト教時代を経てイスラムの時代に至るまで、中近東において<病院>という制度が、フレキシブルに変わりながらも連続しているのをたどった論文。紀元1世紀から11世紀くらいまでの中近東地域という、広い地域と長い時代にわたって、幾つもの言語で書かれた資料から断片的な記述を拾ってつなぎ合せている。『使徒行伝』や初期キリスト教の時代のゼノドケイオン (xenodocheion: 旅人・異邦人が宿泊する場所)から、中世イスラムのビマリスタン (bimaristan) まで、お互いに言い換えられた<病院類似>の施設をたどることができる。前者は、もとはと言えば困っている人に対して慈しみから一宿一飯を与える設備であり、後者は、病人を集めて治療するだけでなく医学を教えるという、現代の<病院>にかなり近い施設であった。

古典古代の医学とキリスト教の医学の違いは大きいけれども、重なっている部分もある。特に、アスクレピオスが、アポロンと人間の母の間の子供でキリストと重ねあわされたとか、T字型の十字架が二匹の蛇が杖に絡み付いているものとみなされたとか、二つの宗教の融合があった。