ナイチンゲール『看護覚え書』

必要があって、ナイチンゲール『看護覚え書』を読み返す。湯槙ます他の翻訳が現代社という看護系の書物を出している出版社から出ていて、その改訳第6版で読んだ。

看護の歴史は日本では比較的ポピュラーな医学史の一分野である。欧米では女性史の視点を入れて水準が高い研究が蓄積されている分野である。

近代看護の創始者のフロレンス・ナイチンゲールの『看護覚え書』(Notes on Nursing)は、日本で最も発行部数が多い医学史の古典だろう。翻訳、改訳、抄訳、対訳、解説と、いったい何種類の『看護覚え書』が出ているのか分らない。この出版点数の多さの理由が、看護学校での教材や推薦や指定図書などの需要によることは、おそらくほぼ間違いないだろう。看護学校の教師たちのどのくらいが『看護覚え書』を教室で丁寧に教えているか、そもそもそんな余裕があるのかは分らないけれども。 

私が一番好きな部分を、最近はやりの(笑)クイズ仕立てで出してみよう。ナイチンゲールの『看護覚え書』の本論は、次のような高らかな宣言で始まっている。 

<良い看護が行われているかどうかの判定するための規準としてまず第一にあげられること、看護者が細心の注意を集中すべき最初にして最後のこと、何をさておいても患者にとって必要不可欠なこと、それを満たさなかったら、あなたが患者のためにする他のことすべてが無に帰するほど大切なこと、反対に、それを満たしさえすればほかは全て放っておいてよいとさえ私は言いたいこと、 ―― それは(A)である。> 

さて、この、「それを満たしさえすれば他は全て放っておいてよい」とまで言われている、ナイチンゲールが考えた良い看護の根幹とは、いったい何でしょう? 次の選択肢から選んでくださいな。 

1. 病室が換気され保温されていること
2. 看護婦が仕事に誇りを持つこと
3. 医者の指示が厳格に守られていること
4. 婦長の権威が保たれていること
5. 患者の心が平安でいられること