女性の近代化と衛生

未読山の中から、1900年代くらいの女性の身体の構築を論じた論文を読む。文献は成田龍一「衛生環境の変化のなかの女性と女性観」女性史総合研究会編『日本女性生活史4 近代』(東京:東京大学出版会、1990), 89-124.

カルスタ系の日本近代女性の身体の歴史についての古典的な論考。1900年前後に、日本の女性の生活と身体とが「衛生」を軸にして異なった仕方で概念化されたというのが主たる論点である。この時期に、地域―学校、女性誌・新聞などのメディア、そして女性自らの身体の三つの回路を通じて、女性が<衛生>を通じて自己と自身の生活を理解する枠組みが与えられ、家事や妊娠・出産・育児などが衛生の原理に従って再編成された。その中で、女性は身体を自覚させられ、規範的な身体観を持つようにされ、その規範に照らして規範から外れるもの(不潔な女や、娼婦のように自らも病気でしかもその病気を人にうつすもの)などを差別する枠組みが作られた。そして、月経を経験し出産を営むという女性の身体的な営為こそが、女性の人格的・社会的・文化的な根幹を成すという、社会分業とジェンダー・ディファレンスの身体的根拠付けも行われたという。面白かった。

大学院生たちはこういう著作を読んでいたのか。なるほど。