『リバティーン』


DVDでイギリス王政復古期の詩人のロチェスターを主人公にした映画『リバティーン』を観る。主演はジョニー・デップ、チャールズII世にジョン・マルコヴィッチ、あとはイギリスの若く才能があり達者な女優・俳優たちが見応えがある演技をしている。

クロムウェルに率いられた「清教徒革命」の厳格な風紀を唱える政権が倒れたのち、1660年にイギリスは王政に戻る。イギリス史の中で、この王政復古期ほど宮廷と上流階級の風俗が放埓だった時代はない。国王のチャールズII世は、十指に余る愛人がいて、20人くらいの非嫡出の子供がいたことで有名である。

その時代に機知と猥雑を縦横に駆使した才人が、ジョン・ウィルモット、第二代ロチェスター伯である。近年の王政復古期の文芸の再評価とともに、全集も編纂され研究が進んでいると聞く。私はもちろん門外漢だけれども、断片的に知っていることが映画の中にちりばめられていて、ロチェスターを良く知っていれば、もっと楽しかったのだろう。たとえば、オクスフォード時代の実験哲学(今の言葉で言うと科学研究)への興味とか、巡回の薬売りに扮したエピソードとか、梅毒と飲酒で心身を蝕まれていった最期だとか。女優のエリザベス・バリーとのエピソードで、ロチェスターが舞台芸術に真剣に打ち込む姿は、現代の演劇・映画関係者としては自然な脚色かもしれないが、私は観ていてちょっと違和感があった。

梅毒とアル中に蝕まれていくロチェスターの最期は出色の出来映え。「悔恨した無神論者という」公式に伝えられている史実とはだいぶ違っていて、この違いを分析させてみようかな。

画像はロチェスターの肖像画。ロチェスター学者の皆さんにお伺いしたいのですが、猿は巡回の薬売りの小道具だけれども、それとこの肖像画は関係あるのですが?  

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