プリニウス『博物誌』

必要があってプリニウス『博物誌』の第七巻「人間について」などを読む。澁澤龍彦がプリニウスを全巻読破しようなどというだいそれた野心は持っていないというような意味のことを書いていたが、私は全巻のテキストすら持っていなくて、ペンギン版の抄訳で済ませているうちに、ネット上で全文テキストを読めるサイトを発見してしまったので、もっぱらそちらを使ってしまっている。1855年の英訳で、詳細な註もついている。サイトはこちら。


ここに入りにくいときには、


に入って、その左上の Classics をクリックすると、アルファベット順の著作者のリストがあります。 そのずっと下まで行くと、Pliny, the Elder がありますので、そちらからどうぞ。 

プリニウスが「人間について」の巻で、世界の各地にすむ怪物人種のことを書いているのは広く知られている。足が逆向きについているとか、男性と女性の体を一つの体に併せ持っていて、右胸は男性的で左胸は女性的な人種だとか。もちろん、異民族からなる帝国の辺境には異形の身体を持つ人種が住んでいるという「中心―辺境論」なんだろうけれども、プリニウスにとっては、これらの「驚異」は、母なる自然が自らの楽しみのために作り出している多様性であって、基本的に、今の流行語で言えば「バイオダイヴァーシティ」を通じて自然の偉大な力を確認する装置でもあった。自然が提示する全体像をみることなく、狭い範囲の細部だけを見て、それだけが可能な現実だと思うことは人間の思い上がりであるというのだ。

今の仕事との関係は遠いけれども、帝国建設と、そこから上がってくる膨大な情報の収集は、傲慢をいましめて謙虚な人間を作ることでもあったというプリニウスの考えは、記憶にとどめておこう。