『悲しき熱帯』

インスピレーションが欲しくて、レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』を読む。川田順三訳の中公クラシックスで上下二巻本。 今日も無駄話。 

恥ずかしい話だけどレヴィ=ストロースの構造人類学というものを理解したことがない。あれはやはり先生に習わなくてはならないものだったのだろうな。私が人類学を習ったのは中根千枝先生と大林太良先生のアカルチュレーション論で、そこでは構造主義は教えてくれなかった。いや、教えてくれたのかもしれないけど、交叉いとこ婚とか、そういうことを習わなかった。私にとってレヴィ=ストロースというのは知識人が書きうる最高の旅行記を書いた作家である。愛読書の一つと言っていいけれども、今回の仕事にはインスピレーションはなかった。

ふと、レヴィ=ストロースがこの作品のもとになるブラジルの奥地への旅行をしていたのとほぼ同じ時期に、和辻哲郎が後に『風土』に結実することとなる中国・インド・アラビアを経てヨーロッパにいたる旅行をしていたことに気づく。『風土』は好きな本だけど、『悲しき熱帯』と較べるとちょっと遜色するなあ。