漁業の歴史

必要があって、近代漁業の歴史の研究書に目を通す。文献は、羽原又吉『日本近代漁業経済史』上下(東京:岩波書店、1955)

重厚で長大な本だけれども、一部だけ要約する。明治維新の後に、自由営業の建前のもと、それまでの「株」や「座」というギルド的な組合が統制してきた漁業の生産と流通の統制が崩れた。定められた漁場で、一定の漁法で魚を獲るという生産の規制はなくなり、流通においても、問屋は自由に魚類を買い、漁民もまた自由に売ることができるようになった。このため、一時的に漁獲量は急増し、明治初期の日本橋の魚市場では、旧幕時代に比して三倍もの魚が取引されたこともあったという。しかし、これは一時的な乱獲による増加であり、新しくできた制度は、漁業の生産性を真に高めたというより、旧来の慣行をかなり保つ方向に進んだという。

時々、ふっと我に帰って、自分がなぜこんな本を読まなければならないのかわからなくなることがあるけれども、この本もそんな本だった。