ハル・フォスター『視覚論』

必要があって、ハル・フォスター編『視覚論』を読み返す。榑沼範久訳で、平凡社ライブラリーから2007年に再刊された。

シンポジウムで読まれた五つの論文に加えて、個別のディスカッションと全体討議をそのまままとめた本を、そのまま訳したという面白い来歴の書物。 訳文の的確さは定評があり、訳者あとがきも、「視覚文化論」とでも言うのだろうか、美術史上のキャノンでない作品の研究と文化批評を組み合わせたような新領域の魅力を伝えるものになっている。

カメラ・オプスクーラを利用した画家といえばフェルメールが有名で映画にも使われていたけれども、科学研究の脈絡で使われた例に触れていたのは、この本ではなかった。えっと・・・確かに日本語の本だったんだけど、どの本だったかしら(笑)あ、この本の「近代化する視覚」という表題の章は、必読の文献ですよ。20年以上も前に出た論文ですから、さすがに、もう、このままではもう使えないと思いますけど。