ルネッサンスの解剖文化


必要があって、ルネッサンス期の文学の中に見られる「解剖」の文化を分析した書物を読み直す。文献は、Sawday, Jonathan, The Body Enblazoned: Dissection and the Human Body in Renaissance Culture (London: Routledge, 1995)

「解剖」という行為は、医学生に人間の体の構造を教えるだけでなく、広い文化的な広がりを持っていた。人間が自分の体の中を知ることは、デルフォイの神託以来の「なんじ自身を知れ」という命題と一致し、キリストが最後の晩餐で自らの身体(パン)を裂いて弟子たちに分け与えたことも、体を「腑分けする」ことと意味合いを重ねられた。プロテスタントの「自己を吟味する」ことは解剖学者のメスのような鋭さと最新の注意を自らに向けることといわれた。カルスタ系の手法に関して好き嫌いが分かれるところだけれども、これは必読の傑作だと思う。

画像はこの本とはあまり関係ないけれども、デューラーがキリストに似せて自らを描いた自画像。傷口を指差して、私のこの傷口を見よ、と言っている。 ・・・あのう・・・ まことにお恥ずかしい話なのですが、有名な『土星とメランコリー』以外で、このデューラーの自画像のすぐれた分析をしている英語の本を一度読んだことがあるのですが、どれか忘れてしまいました。 私が読みそうな英語の本で、心当たりはある方は教えていただけないでしょうか?(笑)