19世紀アメリカの健康の改善


未読山の中から、19世紀から20世紀にかけてのアメリカの健康状況を論じた古典的な論文を読む。文献は、Meeker, Edward, “The Improving Health of the United States, 1850-1915”, Explorations in Economic History, 9(1972), 353-373.

1850年から1915年にかけて、アメリカの健康は改善し始めた。1850年には41歳であった平均寿命は1915年には53歳にまで延びていた。この内実を、アメリカの資料に特徴的なテクニカルな制限を突破した論文である。著者によれば、健康改善の大半は1880年以降に起きたこと、これは公衆衛生の改善によるもので、細菌学が明らかにした感染経路を絶つための水道のろ過などによる感染症の死亡率の減少が大きかったこと、80年代以前の改善はわずかであるか、むしろやや悪化していたこと、この時期生活水準が上がっていたにも関わらず、都市への人口移動があったため、生活水準による健康水準の向上と、都市での生活による低下が相殺したこと、などが書かれている。

図版は、水道をろ過する設備を導入したことが、腸チフスの減少に至ったことを示す一覧表。GHQが日本に進駐したとき、日本に腸チフスが非常に多いことを知って「野蛮国」という印象を持ったのは、狭隘な文明観に基づいているとはいえ、まあ、理解できないわけではない。