『世界史の中のマラリア』


必要があって、マラリア学者による歴史エッセイを読む。文献は、橋本雅一『世界史の中のマラリア―一微生物学者の視点から』(東京:藤原書店、1991)

日本語のマラリア関連の論文では必ず参照されているけれども、なぜか目を通すのが遅れた。タイトルと副題が示すように、お医者さんが書いたマラリアに関する歴史エッセイで、古代から現代まで色々な話題を並べた本。楽しく書いたありさまを想像して、楽しく読めばいい。エッセイの味が好きな人もいるだろうし、嫌いな人もいるだろうけど、お医者さんが医学史を趣味にし、医学史がお医者さんの趣味だった古き良き時代を彷彿とさせる。

表紙にはデューラーの自画像のデッサンが使われていて、彼が脾臓を指さして、「この部分が私を苦しめる」と言っている有名な自画像だけれども、本書によれば、これは、デューラーがマラリアを病んでいることを強く暗示しているとのこと。

この調子で全体を書かれると、書いている本人は楽しいかもしれないけれども、読むほうは少しげんなりする。でも、こういう調子で書いている部分は、「あまり多くない」から、そんなに警戒したり敬遠したりしなくてもいいです(笑)