病院ベッド数の分布


必要があって、イギリスの任意的寄付病院(voluntary hospital) の地理的な分布を研究した論文を読む。文献は、Gorsky, Martin, Jonh Mohan and Martin Powell, “British Voluntary Hospitals, 1871-1938: the Geography of Provision and Utilization”, Journal of Historical Geography, 25(1999), 463-482.

イギリスの任意的寄付病院というのは、読んで字のごとく、個人が好きな病院を自由に選んで寄付をして、それを基金にして作られたある種の慈善病院のことである。寄付をする個人というのは、大貴族や大資本家のこともあるし、金持ちの未亡人でもいいし、小金をため込んだ商店主でもいい。19世紀の後半になると、労働組合や労働者たちの共済組織が寄付者になるという事態も現れて、これが福祉・医療政策の一つの原型となる。この任意的な病院に対して、国や地方自治体など公の機関が提供する病院の医療もあった。これは税金を使って提供する医療サービスである。

任意的な寄付病院は、それこそ「任意的な寄付」があるかないかに存続がかかっているから、荒っぽくいうと、その地域の住民が「ケチ」かどうかでベッド数などで格差が出てくる。(この「ケチ」に、長ったらしい限定をつけると、人の医療費を肩代わりすることに関してケチかどうか、ということになるけれども、それはいい。)その格差を研究したのがこの論文である。確かに格差は存在する。ところが、面白いことに、1890年と1930年を較べると、その格差が小さくなっている。