『ラインの黄金』


この数日、無駄話が多いけど、今日も無駄話。新国立劇場ワーグナーニーベルングの指輪』の序夜「ラインの黄金」を観る。

いわゆる「トーキョー・リング」の2サイクル目の公演で、何年か前の最初の公演のときには、『ラインの黄金』だけ見逃した。全体の雰囲気はなんとなくわかっていて、キッチュでポップでちょっとずれている、ポストモダンの超ビッグな演出のプロダクション。巨大なモダンアートのインスタレーションの中で歌手が歌うというと、雰囲気が伝わるかな。

『指輪』が何かの寓意でなければ面白くないという考えが最近の主流なのかもしれないけれども、私は必ずしもそう思っていない。私は、ワーグナーのもともとの作品のままで、かなり感情移入できる。それをつけると世界の支配者になれる指輪があり、愛を放棄する誓いをする代わりにその指輪を手に入れる醜い小人がいて、最高神だが契約に縛られた片目の神様がいる世界というのは、私には、神話ではなくて、十分現実的である。(あ、個人的に深い意味はないですから、ご心配なく・・・笑)その世界で、権力欲、富への欲望、技術の勝利、情欲と欺瞞と計略と呪いと予言が交錯し、最後には真の愛に殉じた女戦士が、その世界のすべてを焼き尽くす。・・・私としては、激しく感情移入するのに、何の不都合もない(笑) 『ジークフリート』だったかな、ヴォータンの契約の槍が、ジークフリートが鍛えた父親ゆずりの名剣で叩き折られる場面は、深く心に突き刺さる・・・ 

吾に返って話を戻すと(笑)、今回の公演で初めて、『ラインの黄金』という作品が好きになった。歌手たちのことはよく分からないけれども、私は総じて堪能した。二人の巨人は、もう少し迫力があってもよかったかもしれない。オーケストラは、最初のほうで何回か「あれ?」と思うところがあったけれども、すぐに気にならなくなった。

画像は、ヴァルハラの完成パーティの場。色とりどりの風船が落下するさまは、それはそれはおしゃれだった。