医師資格を持つ国会議員

必要があって、医師資格を持つフランスの国会議員の分析を読む。文献は、Ellis, Jack D., The Physician-Legislators of France: Medicine and Politics in the Early Third Republic, 1870-1914 (Cambridge: Cambridge University Press, 1990)

ちょっと調べたら、いま、日本の国会議員の中で、医師資格を持つ議員が超党派の組織を作っていて、これが、共産・民社をのぞいて14人いるそうだ。700人のうち14人だから、2%くらいであり。

第三共和政期(1870-1914)のフランスだと、この比率はずっと高い。だいたい10%かそれ以上になっている。国会議員の数でいうと、43人から71人の間、だいたい60人から65人くらいが常にいる。現在の日本よりも、19世紀のフランスの国会議員はとにかく医者が多かった。これは同時代の他のヨーロッパ諸国と較べても突出して高い数字で、ドイツの帝国議会では、(全体の数が書いていないから分からないけれども)、6人とか10人とかいう数字で、オーストリアでは15人、ハンガリーでは5人、イングランドの庶民院では11人、アメリカではなんと2人だそうだ。この書物は、このフランスにたぶんユニークな、医者=立法家たちを、ある一つのグループとして捉えて、集合的な伝記研究(プロソポグラフィ)をしたもの。私が知らない政治学の手法をたくさん使っていて、出身地や階層の分析、投票行動の分析なども使っている。 

この医者たちは、政治的には圧倒的に左派から中道左派にいる。これは、この時期のいわゆる進歩的な政策が実現しやすいということなのだろうか。 それとも、本当の専門家(エリートの医者・医科学者)と立法・行政の関係において、かえって専門家の意見が通らなくて、医学をかじった程度の政治家が幅をきかせていたのかな。