『妖怪文化研究の最前線』

いただいた論文集を読む。文献は、小松和彦編『妖怪文化研究の最前線』(東京:せりか書房、2009)

今井秀和「お菊虫伝承の成立と伝播」109-130. 徳田和夫「わざわひ(禍・災い)の襲来」164-178. 安井真奈美「妖怪・怪異に狙われやすい日本人の身体部位」244-268. など。安井の論文が面白かった。

「妖怪データベース」の統計的な分析から、妖怪がどの身体部位を狙い、どこから侵入するかということを議論した論文。普通は、身体の開口部が危ない箇所である。中世成立期の民衆にとっては、「毛穴」は病気の侵入口であった。データベースの分析だと、妖怪はもう少し複雑である。たとえば「目」は、「にらみをきかせる」という表現に見られるように、能動的で攻撃的な部位であり、目からは侵入しない。鼻の鼻孔が、常に息の出入りがある部位で、ここが危ない。くだきつねも侵入するし、魂が抜けて出ていく開口部であり、悪霊が侵入する箇所でもある。老人の口から吐き出された命が若者の鼻孔に入ったりする。口は開閉自在であり、口裂け女に見られるように、むしろ攻撃性が目立つ。