フレイザー『金枝篇』

ヴィトゲンシュタインフレイザーの『金枝篇』を読みながら考えたノートをまとめたものがあって、翻訳でいうと大修館の全集の第六巻に入っている。ヴィトゲンシュタインフレイザーが呪術を説明する根本的な姿勢に対して非常に批判的で、きっとこの部分の洞察は、「昔のとんでもない治療法が何故<効いた>のか」という問題を考えるときに、考えなければならない。今回は、体毛についてのフレイザーの記述を憶えるために書いておく。

岩波文庫の翻訳でいうとV.79-80に記されている妖術師と髪の毛である。フレイザーは悪事を働く力は、妖術師の体毛に宿っていて、フランスでは妖術の疑いで審理されているものを拷問にかけるときには全身の毛を剃った習慣があったという。ここにWは反応していて、以下のようにいう。「この信仰の基盤にあるのは真実である。しかし、体の毛を完全に剃られれば、なんらかの意味でわれわれがつい自尊心をなくしがちになるのもきわめて重要である」(ここでカラマーゾフが参照されている。ヴィトゲンシュタインの(カラマーゾフ』好きは有名だけど、通り一遍しか読んだことがない私には、なぜここでカラマーゾフが参照されているのか分かりません。)「われわれに見えるところでわれわれを値打ちのない、笑いものにしてしまう身体髪膚の毀傷が、自己防衛の意思をわれわれの意思を完全に奪ってしまう」