エンペラー・メイジ

必要があって、明治天皇の伝記を調べる。文献は、Keene, Donald, Emperor of Japan: Meiji and His World 1852-1912 (New York: Columbia University Press, 2002).

高名な日本学者のドナルド・キーンによる明治天皇の伝記で、900ページもある大作である。もちろん通読したことはない。きっと日本語でより優れた伝記もあるのだろうけれども、天皇にまつわる色々な日本語を英語でどのように自然に表現するのかというコツをつかむのに役立っている。文学研究者だから英語は流麗だし、日本語からの翻訳も素晴らしい。明治天皇の短歌には優れたものが多いと聞くが、キーンは大喜びで英語の詩の形式で訳していて、これも勉強になる。たとえば、「すすみゆく 世に後れなば 甲斐あらじ 文の林は 分け尽すとも」(漢字は私が適当にあてたものですから不正確かもしれません)という短歌を

It will do no good
If we fall behind a world
That is progressing
Even if we penetrate
The depths of literature.

と訳していて、なるほどと感心する。

ついでにひとつ、これは有名な俳句ですが、この英訳も、私などには勉強になります。

The falling snow –
Meiji has receded
Into the distance.

英語が使いこなせない日本人だと、into “the” distance か、into “a” distance なのか、迷ってしまうのですが。