ビタミンの研究史

必要があって、ビタミンの研究史を中心にした教科書を読む。文献は、島園順雄・万木庄次郎『ビタミン―研究史を中心にして』第二版 I・II(東京:共立全書、1980)

もとは昭和26年に雑誌に連載された<ビタミン研究を歴史から見る>という趣向の文章を昭和30年に一冊の本にまとめたもの。昭和26年当時は、ビタミン研究の歴史を語ることは、過去一世代の医学・生理学の一大発見を語るという雰囲気があったのだろう。今でいえば、<インターネットの歴史を語る>というようなものだろうか。ただ、第二版で化学・薬学の先端研究をしている万木を入れてアップデートをはかったので、「歴史」色が薄くなっているのかも。初版だともっと歴史色が全面に出ているのかな。おそらく歴史色が強い章である第一章を読んでみたけれども、実験栄養学、疫学、実験医学、化学、農学などで、同時に色々な研究が進みながら、必須性が発見され、機能が発見され、化学式が決定され、また細かい区分がされていくなど、とてもダイナミックな有様がよくわかった。ダイナミズムよりもできあがった知識を教え始めると、医学・科学教育の現場で歴史的な視点というのは後退していくのかな。