モダニズムと病院建築

必要があって、20世紀前半の病院建築についての研究書を読む。文献は、Adams, Annmarie, Medicine by Design: the Architect and the Modern Hospital, 1893-1943 (Minneapolis: University of Minnesota Press, 2008)

モントリオールの Royal Victoria Hospital の資料を使って、転換期にあった病院建築について論じた書物。提示したい基本的な態度は、「アクティヴな病院という史観」は、医療における変遷を受動的に受け入れた「いれもの」ではなくて、より積極的に医療を形成する役割を持っていたということである。議論としてはもちろん成立するし、医学史において病院建築への注目を高めるためにはいい道具立てだろう。どれだけ生産的な視点かどうかは、この書物を読んだ限りでは正直なところぴんとこない。

それよりも面白かったのは、20世紀の病院が、さまざまな他の建築からパーツを借りて成立しているということだった。病院全体の外見については、スコットランドの貴族の館の外観を、外来患者の待合室は駅を、調理室や洗濯室は工場を、私費患者の居住空間についてはホテルなどからアイデアを借りてきていた。言われてみれば当たり前だけれども、この「寄せ集め的な」病院空間の構成という視点は意識したことがなかった。意外に重要なポイントになりそうな気がする。