「山男の四月」と六神丸

宮沢賢治に「山男の四月」という童話がある。家庭薬の「六神丸」が小道具になっている話で、確認することがあって読み返した。

山男が草原に仰向けになって空を眺めている。そのうちに樵にばけて街に行って、シナ人の行商人に会う。そのシナ人は長生きの薬だといって水薬を出し、それを自分も飲み、山男にも飲ませる。山男は水薬を飲むと急に体が小さくなり、六神丸の箱になってしまってシナ人の背負い籠に放り込まれる。籠の中では、同じようにシナ人(陳という名前である)に騙されて六神丸にされた別のシナ人に話しかけられる。その男が言うには、山男はまだ骨まで六神丸になっていないから黒い丸薬を飲んだらもとに戻るという。陳が水薬を飲んだ時にも、実はその丸薬を一緒に飲んだから、陳は六神丸にならなかったという。他の六神丸たちは、もうすっかり六神丸になってしまったから戻りにくいが、水につけてもどしてよく揉んでから丸薬を飲むと人間に戻ることができるという。山男は丸薬を飲んで人間に戻るが、その時に陳は丸薬だけ飲んだため巨人になって山男を追いかけて、つかまりそうになったところで、山男は目をさます。それは、空を見上げながら眠り込んで見た夢だった。