フォントの雑学本

冬休みに気楽なフォントの雑学の本を読む。文献は、Garfield, Simon, Just My Type: a Book about Fonts (London: Profile Books, 2010).

フォントに対する関心は、かつては印刷にこだわる文人や芸術家に限られていたが、地下鉄や地名の表示など公共の場での文字の利用が増えたこと、そしてPC上でフォントが選べるようになったことで、急速に拡大した。2009年にIKEAがそのカタログや店で使うフォントをFutura から Verdana に変えた時には、その変更に反対する人たちがたくさんいてウェブ上から社会現象になったそうだ。現代社会は1950年代に作られた Helvetica というすっきりして直線的な感じのフォントで埋め尽くされていて、Helvetica なしで暮らそうとすると、NYの地下鉄にも乗れないしクレジットカードで買い物もできないこと。20世紀のイギリスの芸術家のエリック・ギルが作り出した Gill sans というフォントは現代的なフォントの傑作だが、ギルが娘や犬に示した性的な関心があらわになると、そのフォントへのボイコットが起きたこと。ロンドンの地下鉄の駅名などのフォントは1916年に作られた Johnston sans というものだが、それが少し不便になったので、1979年から Eiichi Kono という日本人が中心になって改良版を Johnston New として発表したこと。その発表の時に、Underglound と表示したこと。グーテンベルクの固く込み入った感じがするフォントから、出版の中心であったヴェニスで近代的なフォントが始まったことなど、フォントについての雑学集。とても楽しくて、文字を見るときにこのフォントはなんだろうという楽しみがひとつ増えた。

ちなみに私がずっと使っている英語のフォントは Courier New というもので、基本、これしか使ったことがない。VerdanaFuturaHelvetica などのフォントが称賛されるなかで、Courier Newについて、次のように書かれていた。「馬鹿なガリ勉だと思われたくない限り、このフォントを使ってはいけない。図書館員とデータ入力会社の人間だけが使うフォントである。」

・・・はい、私は、まさしく馬鹿なガリ勉ですが、それが何か?(笑)