日本のHIV

必要があって、日本のHIV/AIDSについて論じた論文を読む。文献は、Runestad, Pamela, “What People Think Matters: the Relationship between Perceptions and Epidemiology in the Japanese HIV Epidemic”, The International Journal of Interdisciplinary Social Sciences, 5(2010), forthcoming. 著者はハワイ大学文化人類学者。

日本では1985年に最初のHIVの症例がみつかり、現在では18,000人の症例が確認されている。実際の数はその4倍とも10倍とも言われている。たとえ10倍であったとしても、患者数はたとえばアメリカに較べるとはるかに少ないが、新患者数が増加し続けているただ一つの先進国だと言われている。その理由を、疫学的な現実とHIVについての人々の理解の間にギャップがあるせいだと論じた論文である。

HIV流行のさまざまな段階において、イメージと疫学がフィットしていない。当初はもちろん血友病患者の薬害エイズであったのに、外国人のセックスワーカーがもたらす病気であるとされた。 日本における性教育に対しては、ジェンダーフリー教育に対する保守派の批判もあり、家族を清く正しく生成する方法に集中しており、性病の予防という関心が欠けていること。特にコンドームの役割が避妊であり、性病予防とみなされていないこと、女性が「汚す」という像が、特に外国人のセックスワーカーや若年で売春をする女性について結ばれており、こちらに意識が集中している。実際にHIVに感染しているヘテロセクシュアルの男性や、2000年から多くなっているホモセクシュアルの男性(MSM)などが、HIVの理解/イメージの構成に取り込まれていない。

すごくざっくりした議論だけれども、面白かった。