オクスフォード婉曲語法辞典

有名なオクスフォードの婉曲語法辞典をちょっと読む。Oxford Dictionary of Euphemisms. R. W. Holder という人物が編集した、個人的な味があって読んで楽しい婉曲語法辞典。私が好きなAlan Davidson のCompanion to Food と同じ傾向の本のつくりである。「婉曲語」とか「食物」といった、一つの比較的広い領域について、とてつもない量の知識を持つ物知りの個人が、その知識をイギリス風のユーモアを含めて字引き風に説明するレファレンスである。これは、OEDを一人の編集者が作ったとか、そういうのと同じ系統の現象なのかな。

婉曲語法の中の13の主題については、特別な説明がついている。薬物などの中毒、国事・政治、身体機能、ビジネス、出産、犯罪、死、教育、身体部分、病気、売春、宗教と偏見、セックスである。昔は「中絶」などが入っていたらしいけれども、合法化されてだいぶ経つから、隠語で語る必要がなくなって、主題から落ちたのだろう。医学関係の用語を読むと、「人々から見た病気・医療」について感覚的に共有できるかなと思って、しばらく前に読んで見たけれども、何かの役には立ったのだろうか。

ちょっと衒学的な婉曲語法をひとつ。梅毒のことを、sigma-phi というのは、syphilis の子音をギリシア語でいったのだそうだ。へえええ。 “Stay away from her. Her father was a sigma-phi, you know.” とか使うのかな。