青森のトラホームについての論文を読む。文献は、川内淳史「1930年代地域社会の様相―青森県におけるトラホーム問題対策を中心に」『上越社会研究』no.21(2006), 41-50.
東北凶作のあと作られた、東北の農村をたてなおす東北生活更新会・東北更新会などの活動のうち、トラホーム対策を論じている。青森は徴兵時の検査でトラホーム罹患率が全国で最も高く、この汚名を返上するためにも、トラホーム対策が行われる。「わが青森県が特有のトラホームを根絶するという意志ならびに努力、そしてその効果というものは、他県のそれらの努力、効果と同一視すべからざる特別の重大な意味をもっている。それは、もはや、本県におけるトラホームのみに冠した事柄でなく、県民一般の『生活』そのものに関することである。」と表明されている。このように、県当局が中心になって行ってきたトラホーム対策に、東北生活更新会の努力が加わる。
県ごとにわけてデータを掲示するという日本の統計の習慣は、「ワースト3」のような、府県で競争させる文化を作っただろうということが一点。 もう一つは、選んだ疾病によって、医療資源がどのような地域に向けられるかということが異なるという点。 たとえばコレラを選んだとしたら、その対策は国際的な港町に重点が向けられるが、トラホームであれば、青森のような地域に重点を向けることになる。 当たり前のことだけれども、ここから、何か、大事なことに進めそうな気がする。