『ソロモンの洞窟』

『失われた世界』を読んで、どうせだから、『ソロモンの洞窟』もわざわざ文庫本で買って読んでみた。帝国主義のアフリカ蔑視と他者化の象徴として悪名高い作品を小学生のときに読んで、いまでもまざまざと憶えているシーンがあって、それは、財宝のありかを記した地図と手紙を、自分の骨を削って自分の血で書き記して死んだ男の骸骨が洞窟の中にあるという部分だった。印象に残る挿絵があった。それ以外の記憶は断片的になってしまっていた。文庫を読んで、思い出した部分もあるけれども、マーク・トェインと混じってしまっている記憶もあるのかもしれない。

今回読んで、ノスタルジアと失望を等分に感じた。失望のほうが多かったかもしれない。あの骸骨と血の手紙の記憶だけにしておいたほうが、これからの人生で『ソロモンの洞窟』を愛して過ごすことができて幸せだった。かなりの部分が、戦争アクションものだなんて、まったく憶えていなかった。