カーライル『衣装哲学』

カーライルの『サルトール・ラサルトゥス』(1833-4)は、衣装についての哲学的な思索という創作のかたちをとって、当時の文明を論じたすぐれた評論であるが、その冒頭で、カーライルは当時の科学の進歩をたたえている。

ラグランジュラプラスの功績で引力の科学は完成され、ハットンやウェルナーが地質学や地理学を発展させている、などなどと列挙され、最後に、我々自身の体を構成する組織( tissues )については、体腔、管、筋肉などについて、ローレンス、マジャンディ、ビシャなどの偉大な医学者たちが明らかにしているとまとめている。これにつなげて、すべての tissues の中で最も壮大なもの、唯一の本当の繊維であるもの、すなわち衣服が無視されていないだろうか、という形で、その評論を始めている。(ローレンスというのは、セント・バーソロミュー病院の外科教授であったウィリアム・ローレンスのことであろう。)ここで、カーライルは、tissue という言葉が人体の組織という意味と衣服の繊維という二つの意味を重ねている。