タクアンうどんの謎

古い本を整理して書庫に入れるときにメモした。メアリー・フレイザー著、ヒュー・コータッツィ編 横山俊夫訳『英国公使夫人の見た明治日本』(京都:淡交社、1988)外国人が日本に感じた「臭い・匂い」について。

街のにおい、食べ物のにおい、そして、これは有名な下肥のにおい。 

72 小田原で:これらの恐るべき一撃が住民を一掃するまでは、産業の街であった。街の位置は低く、悪臭がたちこめている。

鎌倉で、昼間は二、三家族の農民が田植えをします。貴重な作物を養う、あの恐るべき液体(下肥)の中に膝まで浸かって立ち働くのです。 177

伊香保に行くときに嵐にあい、その途中の宿・茶屋で、食事が出された。それは、「湯気が立つマカロニの鉢であった。(これはうどんのことである。)その中に入っているらしいダイコンの堪えがたい香りがなければ、私たちもよろこんで食べたでしょう。ダイコンは大きな西洋わさびで、生来の悪い腐臭を持っています。日本人はこれを漬物にしたり、長く保存したりといったさまざまな方法で加工し、それが食べごろになるときには、非常につらくて身の毛もよだつようなものとなり、誰かがハンバーガーチーズについてのべたように、それは危険信号として使えそうです。ダイコンに駆り立てられて、ダイコンと一緒にいるくらいなら、篠突く雨の中を次の宿に行くと主張した。193.

公使夫人が勘違いしているのか、よくわからない。ダイコンが「生来の悪い腐臭」を持っていると書いているが、まずここが勘違いではないだろうか。漬物とか保存とか書いているから、これは、タクアンのことを書いているのだろう。外国人の多くは、日本にきたら礼儀正しくしなければならないと信じ込んでいるから口に出しては言わないが、タクアンは、かなりインパクトがある臭いをもっていて、『家畜人ヤプー』でも重要な小道具になっている。しかし、そうすると、公使夫人にだされた食事は、あたたかいうどんにタクアンが入っていることになり、そういう食べ物は私は少なくとも食べたことはない。公使夫人も書いているが、漬物と炭水化物というのは、日本の民衆食のパラダイムだったから、タクアンうどんがあっても驚かないけれども。